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エイプリルフール(2010)

年に一度、嘘をつくことが許される日がある。そう、四月一日のエイプリルフールだ。直訳すると四月バカという何とも単純明快なバカのための記念日である。

私は今日という日にウソをつこうと考えていた。相手はもちろん銀時だ。最近私に対して冷たくなったとか愛情表現が薄くなったということを心配しているわけではないが、銀時が私をどれくらい想ってくれているのか知りたくなったのだ。というわけで、

――ガラガラ

「お邪魔します」
「おう」

居間に入るとソファに寝転んでジャンプを読んでいる銀時。私に視線をちらっと移してそう言ったかと思えばまたジャンプ。今の銀時には私<ジャンプらしい。え、それってどうなの。

「ぎ、銀時」
「ん?」
「だだだだ大事な話があるんです」
「急に畏まってどうした?」

私の尋常じゃない様子を察してか、ジャンプを置いて私に視線を合わせる銀時。ソファに正座して向かい合う私たちは誰がどう見ても異常だ。

「で、どうしたの」
「驚かないで聞いてね」
「あァ」
「実は…あ、あ、」
「あ?」
「ああああ赤ちゃんが出来ました」
「………………え?」

いや、もちろん嘘なんだけど…えーっとどうしようかコレは。

「マジで…?ガキが出来た?ってことは俺が父ちゃんでお前が母ちゃん?え、どうしよう…めっちゃ嬉しいんだけど…あれか、この間中に出したのが正解だったな…いやぁ…俺にもついに家族が…って神楽たちもいるけどやっぱりそれとこれは別だもんな。血の繋がりってのは特別というか…」

どうしよォォォォオオオオ!予想外に食いついてきたよ!しかも素直にめっちゃ喜んでくれてるし!っていうかこの間の中出しっていつのだ?私全然知らない…って全然構わないんだけど。って中出し云々じゃないよ!今更ウソでしたなんて言えないじゃんこれ!

「…俺これからちゃんと仕事探してくるな。婚姻届とかどうするか?さっそく明日…って俺はこんなに幸せでいいのかねェ…結婚したら毎日俺とお前と一緒にいられるんだもんなァ…」
「ぎ、銀時?」
「ん?」
「赤ちゃんの話…冗談って言ったらどうする」
「…………………え?」
「だ、だって!今日エイプリルフールだし銀時最近冷たいし私なんかジャンプ以下だし愛されてないのかと思って銀時の反応が見たくて…」
「……マジ?」
「子供ができて別れるって言われたらそれまでだと思ってたの!でもこんな喜んでくれると思わなくて…!」

急に銀時の香りがしたと思ったら強く抱きしめられていた。頭の上から大きなため息が一つ聞こえてきて、捨てられるのかと不安になってみれば横抱きにされた。私は恐る恐る銀時の首に両手を回してギュッと首筋に顔を埋めた。

「俺がお前を捨てるわけないじゃん。俺にとってお前は唯一無二の存在なわけよ。ドゥーユーアンダースタンド?」
「…イエスアイドゥー」
「いや、俺としては中出ししまくってすぐにガキを作っても良かったんだけどさ、どうせなら既成事実を作って責任っていう形で結婚するんじゃなくて、ちゃんと俺の愛をお前に伝えて結婚したかったわけよ」
「じゃあどうして知らない間に中出しなんかしたの」
「やっぱりナマは違うのよ、気持ちよさが。魔が差したっつーか」
「ふーん」
「ごめんな」
「ねェ銀時…結婚しようよ、そんでさ家族作ろう。神楽ちゃんと新八君に弟か妹作ってさ、」
「俺の台詞取るんじゃねェよ。…名前、俺と結婚してください」
「…こちらこそ、よろしくお願いします」
「じゃあ今日から早速ナマでヤらせていただきます」

この間のたった一回の中出し事件で本当に子供ができていたことに気づくのは二週間後の話。


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