【これ以上好きにさせんなよ】
「ナマエ部活行くぜー」
「あ、ちょっと待って!」
帰りのHRが終わり、真っ先に教室を出る。隣のクラスのナマエに声をかけると慌てた様子で駆け寄ってくる。これがうちの可愛い可愛いマネージャーだ。
「朝練の時少し指痛めてたけど平気?」
「ん?ああアレね。平気平気!お前がすぐテーピングしてくれたし」
「練習前にもう一回巻くね」
「サンキュー」
部室棟の前で分かれ俺はむさ苦しい男だらけの部室に入る。ナマエは女子専用の部室へと向かう。いいなあ…あっちはいい匂いすんだろうな。
「やっほーマッキー!指大丈夫?」
「おー及川。平気平気。」
「あれ?そのテーピング剥げかけてるね。巻こうか?」
「いや、あとでナマエが巻いてくれるって」
「ほおほおナマエちゃんがね」
「んだよ」
「可愛い可愛いマネージャーが巻いてくれるんなら及川さんの出番はないね」
「そうだな。ヤロウに巻かれるより可愛いマネージャーに巻かれる方が嬉しいな。当たり前だろ」
「やだマッキー惚気〜」
「うるせぇよ。多分誰に聞いてもお前より可愛いマネージャー選ぶわ。」
「マッキーひどくない!?岩ちゃんなら俺って言ってくれるよね!?」
「うっせーグズ川!喋ってないでさっさと準備しろ!」
岩泉の一言でみんなパッとしゃべるのを止め、黙々と準備に取り掛かった。えー岩ちゃん何で俺だけーと抵抗してみせる及川は岩泉に殴られた。こいつはいつになったら学習するのだろうか。
体育館につくと1年に交じってナマエがコートの準備をしていた。あいつはまたあんなに重いものを…
「金田一〜これ頼むわ」
「あ、ハイ!」
「花巻、私にもできるのに」
「いいのいいの。お前は俺のテーピングよろしく」
「ごめんね、金田一。よろしく」
「りょ、了解です!」
ナマエは自分の笑顔の破壊力というものを知らない。現に金田一も顔を赤くしてやがる。もうちょい自覚してくれると助かるんだけどなあー。試合とかにいってもすぐ他校のヤツに絡まれるし。そんなマネージャーを回収するのはいつも俺の役目なわけだが。
「もうすぐ予選だね」
「だな〜」
「がんばってね。」
「もち。ちゃんとお前を全国に連れてくよ。及川も岩泉も松川も、俺らみんなでお前を連れてく」
「うん!楽しみにしてる!」
キラキラとした笑顔が俺に向けられた瞬間、心臓が止まった気がした。
「お前そんな顔他のヤツに見せんなよ」
「え?」
「こっちの話!」
頭をポンポンと撫でて、テーピングの具合を確かめながら立ち上がる。ふとナマエを見ると、顔を赤らめているのがわかった。
「え、なんで赤くなんの」
「いや、だって…こんなこと…ドキドキする…慣れてないし…っ」
え、だって及川のクソ野郎がしょっちゅうやってるじゃん。でも及川にはドキドキしてなくて俺にはドキドキしたってこと?それって、
「あの…頼むからこれ以上好きにさせんなっつーの」
「え、え!?」
「いや、まあ後でちゃんと言うわ。うん、」
二人して顔を真っ赤にしていると、及川から「そんなとこで青春してないで練習始めるよ〜」と言われ我にかえった。体育館にいる全員の視線が突き刺さっていた。さらに顔を赤くしたナマエに、駄目押しの頭ポンポンを食らわせて及川達の元へ走る。今日の練習は、いつもよりうまくいきそうな気がした。
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