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「着いたっス。」
「また子ちゃんありがとう」
「まあほらあれっス…あんたも元気でやるっスよ」
「うん、みなさんも。高杉君にもよろしくね」

高杉君の言うとおり、朝早く船は江戸に降りた。ここから中心部までは少し距離があるけど、なんとか帰れるだろう。高杉君は見送りこそしてくれなかったが、昨日の着物をくれた。お土産まで持たせてくれるとは…中々良い宇宙旅行だったなあ。

朝靄に紛れ静かに去って行く船を眺めながら、これからどうしようかと思案した。とりあえず歩こう。そうすれば、そのうち彼らの元へたどり着けるだろう。

「もう良い加減分かる場所に出てよ…」

私がここへ来てから屯所の外を詳しく見て回ったことがないのが完全に仇になったようだ。屯所に辿り着けない原因である土方君を恨まずにはいられない。どうしよう泣きそう。

半ベソをかきながら歩いていると、ようやく見慣れた建物を見つけた。あと少し…あと少しで屯所にたどり着ける…!少しだけ元気を取り戻し、再度気合を入れて歩き出したとき、見慣れた後ろ姿を見つけた。

「土方くん…っ!!!!」

突然名を呼ばれ鬼の形相で振り向いた彼は、声の主が私だと気づくと今度は幽霊でも見たかのように驚き、咥えていたタバコをぽとりと落とした。

「ナマエ…!!!」
「良かった…もう会えないかと思ったあ…」

土方くんに思いっきり抱きつきながらそういうと、土方くんの腕が私の背中に回った。

「馬鹿野郎…っ!あんまり心配させてんじゃねェよ!!!」
「ごめんなさい…」
「何もされなかったか?痛いとこねェか?」
「うん、何もされてないよ。本当に大丈夫、元気だから」

暫しの抱擁のあと、土方君は悪りィといって体を離し、新しいタバコに火をつけ歩き出した。こうやって土方君の隣を歩くのは久しぶりで、なんだかデートみたい。会話の内容は全く可愛くないけど。

「お前を攫ったのは誰だ」
「言ったら怒るでしょ」
「怒らないから言え」
「鬼兵隊の高杉君」
「ああもうだから一人で出歩くなって言っただろうが!どんな巻き込まれ体質だよ!アァ!?」
「怒んないって言ったのに!」
「うるせェ!俺がどんだけ必死に探したと思ってんだ!そもそもお前が言いつけを守らずにだなァ!」
「心配してくれたんだ」
「そりゃするだろ」
「…ありがとう」

私が素直にそう言うと、土方君はソッポを向いて頬をかいた。これは彼が照れている証拠だった。

「手繋いでもいいですか」
「勝手にしろ」

それからは無言のまま、少しだけ遠回りをして屯所に戻った。




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