頭に入らない授業を終えて屋敷に戻った私は自室までの道のりを土方さんと共に歩いていた。最初の頃のぎこちなさも大分薄れてきた気がする。

「あ、おかえりなせェ」

「総悟君ただいまー」

「土方さん」

「なんだ?」

「近藤さんが有休消化しろって言ってやしたぜィ」

「は?なんで」

「あんたら付き合いだしてからも前と全然変わんねぇだろィ?有休でもとってナマエをデートにでも連れて行ってやれっつー近藤さんの優しさでィ」

「「え?」」

「え?もしかしてバレてないとか思ってやした?いやいやないないないない。わかりやす過ぎるくらいですぜィ?」

具合なんて悪くないはずなのに頭が痛いのは何故だろう。土方さんも頭を抱え込んだまましゃがみ込んでしまった。きっと私達は総悟君に弱みを握られてしまったのだろう・・・あの総悟君に。

「屋敷の使用人全員が知ってやすぜィ?」

総悟君はニヤッと笑うとそのまま踵を返して厨房へと向かった。

「土方…さん?大丈夫ですか?」

「気をつけていたつもりなのですが…どうやら私の行動が軽率だったようです」

「いや、多分私が浮かれ過ぎてたんだと・・・」

「まぁでもバレてしまったものは仕方ないです。隠さなければいけないようなことをしているわけでもないですし。」

「そうだけど…土方さんは大丈夫なの?」

「屋敷の主である近藤さんがあんな風に言ってくれてるんだったら、何の問題もないでしょう。それに…」

「それに?」

「隠す必要がないということはこれまでよりも堂々とお嬢様の傍に居ることが出来る」

「え?」

「世間は明日から三連休ですし…有休を取らせてもらって旅行にでも行きませんか?」

「良いんですか!?」

「お嬢様さえよければ、是非」

「ありがとう土方さん!大好き!」

あまりの嬉しさに土方さんに抱きつくと、ギューっと力強く抱き返してキスをしてくれた。これから恋人としての時間が増えると思うとドキドキが止まらなかった。

「恋人としての旅行ですから…覚悟しておいてくださいね、」

fin

prev|next|return