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刹Cまぐれ更新/雑食/変態/変換無し

坂田銀時

桜満開、春爛漫。
私と彼が出会ったのは、ちょうど一年前の穏やかな晴れの日だった。

なんとなく始めたコンビニのバイト。
なんとなく始めただけの、コンビニのバイトの、まだ三回目の出勤の日に事件は起きた。

春の陽気にあてられたのかはたまた元々頭がおかしかったのかはわからないが、完全に目がいっていてしかも全裸にコートという不思議な出で立ちをした男に拳銃を突きつけられ金を出せと言われた。露出狂なのか強盗なのかはっきりしてほしかったが、今それをこの人に告げることは得策ではないと思ったので要求に大人しく従うことにした。
バイト初日に教えられたもしもの時のためのフェイクの札束がある場所を探りながら、どのタイミングで警察に連絡をしようかと考えていたその時、ふらっと目の前に現れた彼はさながら救世主のようだった。

「さっさとジャンプの会計したいからどいてくんない?」

私に突きつけられている拳銃が見えていないのかと思ったが、そうではないらしい。全てを見て把握した上でこの人はジャンプを買おうとしていた。「え?今この状況だジャンプ?嘘でしょ?」と私が呆気にとられていると、突然激昂した露出狂の強盗犯がその男に向かって発砲しかけた。が、その人は腰に差していた木刀を抜き素早く拳銃を弾き飛ばすと、あっという間に男を伸してしまった。そしてその男を蹴り飛ばしレジの前から退かすと「ほい、230円な」と小銭を台に置いて何事もなかったかのように帰ってしまった。私はしばらく呆然と去って行く彼の後ろ姿を見つめ、はっとて我にかえりとりあえず警察への連絡をした。

「こんなことあったの覚えてます?」
「んー、あったかそんなこと」
「あったんです。あの時私は坂田さんに一目惚れしたからここにいるんですよ」
「へー、そうなの」

あれから一年、坂田さんに一目惚れをした私はいつの間にか万事屋に入り浸るようになっていた。何度好きだと思いの丈を叫んでみても「へー」と一言返されるだけで、決してまともには取り合ってくれない。お前はそんな俺に対して意地になっているだけで、多分好きでもなんでもないんだと思うぞと言われたがそんなわけはない。あの日から毎日欠かさずこの人に想いを馳せている私をなんだと思っているのだろうか。

2020/07/19(20:08)



坂田銀時

「銀さんはタバコ吸うの?」
「まあ吸えなくはないけど好んで吸いはしねェな」
「あれって美味しいの?」
「うまくはねェよ。嗜好品だ」
「美味しくないのにどうして吸うの?」
「付き合いだったりストレス発散だったりじゃね?ってかなんでそんなこと聞くの?」
「ちょっと気になっただけ」
「お子ちゃまには早いっつーの」
「とっくに成人してますけど」
「つってもなァ。百害あって一利なしっていうしわざわざ吸う必要ねェって」
「……今度土方さんに聞いてみよう」
「やめとけあいつはニコチンの化身だ。取り込まれるぞそんなに味が知りてェなら俺が教えてやるよ」
「どうやって?」
「俺が吸ったあとに思いっきりキスしてやる」
「え、それはいいです。やめとく」
「なんでだよ」

2020/06/23(09:13)



高杉晋助

「ほらよ」と投げ渡されたのは、恐らくジュエリーの類いが入っているであろう小箱だ。しかしそこにきらびやかな包装などはなく、ただの真っ白な箱。
「プレゼントくらいまともに渡せないの?」と問うと、「お前ェはまともな男と付き合ってると思ってんのか」と言われた。なるほど、晋助は自分のことをまともではないと自覚しているらしい。
「でもプレゼントはくれるのよね」
「誕生日だろ」
「そういうところはまとも」
「なんだよいらねェのか」
「そんなこと言ってないじゃない」
なんだかんだ言いつつも、毎年プレゼントを用意してくれる晋助は、根は真面目で優しくまともなのだと思う。

2020/06/23(09:10)



沖田総悟

敵がすぐ近くまで迫って来ている。
私たちは逃げ込んだ真っ暗な部屋の中で息を殺す。
「沖田隊長、私もう、駄目です」
「何言ってやがる」
多量の出血のせいで四肢の感覚は薄れ、もう一歩も動けそうにない。
「お前俺のこと好きだろィ。なら俺のために生きてみろ」
「もう無理ですよ……」
「上司の命令だぞ。ちゃんと聞け」
大好きな人に看取られるのは幸せだ。しかしこの人は今までにこうやって何人もの仲間を看取り、その度に決して広くはない背中に十字架を背負って必死に生きて来たのだろう。
「なりたかったな、お嫁さん」
「帰ったらしてやるよ」
隊長はそう言って、もうすでに何の感覚もない私の左手の薬指に口付けた。それはまるで結婚式の誓いのキスのようだった。

2020/06/23(09:10)



レオナ・キングスカラー

ラギーブッチの考察
「監督生ってレオナさんとどうなんスか?」
「え?レオナさんと私が……なに?」
「付き合ってないの?」
「そんなわけないでしょ」

レオナさんがオーバーブロットした一件から、なにかと監督生と関わることが増えた。オクタヴィネルの一件があったときは監督生がレオナさんの部屋に泊まるなんて珍事も起こった。そしてその後理由は色々あれどあの究極の面倒くさがりのレオナさんが監督生のために知恵を貸し、実際に行動を起こして助けるなんてこともあった。俺はおそらくこの学園で最もレオナさんの近くにいて、あの人ことを一番知っている。そんな俺がレオナさんの微妙な心境の変化に気づかないわけがないのだ。

「レオナさんは監督生のこと大事にしてるみたいだけどな〜」
「珍しいもの好きなだけじゃない?」
「自分で言いながら落ち込むのやめなよ」
「私なんかが釣り合う相手じゃないでしょ…。元々の住む世界が違うし王族だし」
「だからいいんじゃん。王家の利権狙いの女なんてレオナさんもうんざりだろうし。監督生くらい平凡で欲がないが丁度いいッスよ」
「それ慰めてくれてるの?」
「まあ一応」

学園の中で偶然でも監督生と会った日のレオナさんは機嫌が良い。このふたり、なんとかうまくいかないものか。

2020/06/23(09:05)



及川徹

高校生活最後の体育祭。思い出づくりに燃える運動部の子たちと違い、私は特に思い入れのないこの体育祭が早く終わることばかりを願い日陰で過ごしていた。
グラウンドに響き渡るピストルの音、放送部の実況、各団の応援合戦。それらをどこか他人事のように聞いていると、突然「三年五組 ーーーさん!」と自分の名前を呼ばれた。ハッとして声の主の方を見ると、朝礼台の上のマイクに向かって及川くんが必死に私の名前を呼んでいる。まわりの子が早く早くと及川くんの元へ行くように促すが今は借り物競争の時間のはずで、私が彼の望む物を持っているとは到底思えない。

「なんですか……?」
「好きです付き合ってください!」
「え?」

どうやらお題は“好きな人”だったらしい。
喧騒の真ん中にひとりポツンと取り残されなにがなんだかわからずにいると返事を急かされる。
もうどうにでもなれと密かに憧れていた及川くんの手を取った私は急に表舞台に立たされたような気分だ。力強く握り返してきた彼の手は、見た目から想像するよりもずっと大きくて硬い男の人の手だった。

2020/06/23(09:03)



爆豪勝己

「くっ…はぁはぁ…っ」
「勝己…っ好き、だよ」
「っるせぇ!んなこと…知ってる…っ」

いつも勝気な顔が歪むこの瞬間が大好き

「クソッ…ヤベェ」
「んっ、もっと」
「お前そんな顔他の野郎に見せんじゃねぇぞ…っ」

こっちのセリフだよ、なんて言ったら次はどんな顔をするのだろう

2017/09/03(01:05)



上鳴電気

「まだ起きてんの?」
「いや、外…ほら」
「ん?雷?こえーの?」
「音とかすごいじゃん」
「普段しょっちゅう俺の横にいんのに雷怖いってのはどうなのよ」
「上鳴はゴロゴロ言わないでしょ」
「言ってやろうか」
「それは迷惑」

2017/07/06(00:36)



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