「迷走中につき、」の雨響様の描かれた白キッド×キッド設定で即席ながら書かせて頂きました。ありがとうございます!勝手な事にロキド前提となっております。
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反転した眼窟がぎょろりと俺を映した。
ぎらり、金色に鋭く光った視線と目の前に広がる白、白、白。潔白を示す色彩が俺をどうしようもなく追い詰める、そしてそいつは俺自身の分身に他ならないという奇妙な事実に吐き気がした。

「よう、兄弟」

ずず、と大して寒くも無ェ空間で白の気体を纏った「俺」が俺に迫る。白の威圧感に後退った筈の片足が凍り付いたかの様に重く、動かなかった。冷たい匂いが敏感に反応する五感を支配して、溶けて行く。「俺」は笑っている。

「そう脅えるなよ、」

―ここはてめェの夢だ、楽にしようぜ?

白すぎる腕に絡まる黒の鎖がじゃり、と音を落とす。俺の髪を掬った手のひらがこめかみに触れて、白と混ざる鈍い赤に目がちかちかと震えた。

「……勝手に、出て、来るんじゃ無ェ」
―ここは俺の夢だ、出て行きやがれ。

つっかえながら吐き出した鸚鵡返しの言葉に高らかに笑う「俺」。
耳に当てていた手のひらが下降して、首を掴む。錆びた鎖が時折胸辺りに触れては揺れていた。

「今起きたって隣の野郎の寝顔が見れるだけだ、もう一遍ヤるのか?」
「……。」
「トラファルガーはヤサシイからなァ。妬けちまうだろ、」


にたり、と音を立てて上がる口角が鋭利だ。耳に白い頭が寄る。耳元で頭に響かせる様に語られる声は紛れも無く己のそれで、何かが可笑しいまま回っている空間。

「彼奴の願望を知ってるか?」

「お前とひとつになるって事に他なら無ェ。」

「だがそいつは無理な話だ。結局てめェらは貪り合って最期には殺し合うだけの獣に過ぎねぇんだよ、兄弟。」


がぶり、噛じられた耳。尖る犬歯も、流れる血を舐めとる舌も、俺は知っている。これはトラファルガーじゃ無ェ、こいつは、。

「ッ……、」
「俺は、お前だ。トラファルガーがどう足掻いても俺の位置までは踏み込んじゃ来れねえ。」

「お前の知らねぇ所なんざ無ェんだ、感じる所も、腹ん中も、心臓も、全部な。彼奴は、トラファルガーは勘違いしてやがる。誰も俺に違い無ェ俺を分かりやしないんだよ。」


―そうだろ?


痛む耳で何処か悲しみを孕んだ己の声色を受け入れながら、意識は遠退いて行く。

「またな。」

最後に見た色は、白に残る一点の血の色。もう一人の俺の耳に、真新しい傷が出来るのは、当然の事だった。




「……、」

暖かい。起き上がると同時に痛む頭が、重い。邪魔な前髪を掻き上げながら横を見れば眠るトラファルガーが居る。皺の寄った白のシーツの波が、小一時間前の記憶と夢の記憶とをぐちゃぐちゃに乱した。

居心地の悪い下肢を動かせば眠りの浅い隣の男がすぐに目を覚ます。視線が絡むとまた深く口を食われて、ああ、彼奴の言う事が的を得てばかりだ。


「……血、出てるぜユースタス屋」

そう言ってトラファルガーが舌を這わした耳の傷は、「俺」が付けたものか、それとも。




可逆性の裏地

(反転したのは、俺かお前か)


















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