実に発展性も何も無い。そうして身を寄せ合う俺たちは心底、
ああだからとりあえず。
眩んだ脳の片隅にちらつくとても不似合いな言葉は見ない事にしようか、なあユースタス屋?










望んだものの












『俺たちは互いに慰撫の言葉も叱りつけも掛け合う訳にはいかねえよ。そして義理も無えんだ。』
いつもの、あの眉間に皺を作り切なそうに細められた目で俺をじっと見てそう言った。そしてユースタス屋は俺の頭を抱え込みすがり付いて来た。甘んじてそれを受けるが中途半端な体勢の背中が痛む。
「知ってる。」
プライドの高いお前がこうして甘えの姿を見せる時も。お前が俺に何を求めて居てそれを俺がくれてやれない事を解って居ながら俺に身を寄せる事も。

「仲間が死んだか?」
「……。」

否定も肯定もしない。抱き込まれて居て顔も見れないがほんの少しだけ強くなった遠慮の無い背中の軋みが全てを知って居る。
顔が見たくていつものコートを着ていない白い背中を右手で撫でた。左手は上に持って行き降ろされた手入れのされていない髪に指を通す。お前の全てが見たいよユースタス屋。俺が全てを見せようとしたってお前は目を逸らして居るけれど。それじゃあ不公平だろうなんてガキ染みた事は言わないがそれでも、この優しい一人の船長の姿は無性に俺を苛々させると同時に愛しさを募らす。

首筋にあたる赤い頭がすりすりと音を立てた。背中を撫でてやるのを止めるとゆっくりと顔を離したので頬を指の背中で擽ってから少し嫌がるのを無視して長いキスをした。合わさってからおずおずと差し出された舌を絡めて頭を撫でる素振りをしながら放すつもりの無い後頭部へ力を入れる。

呼吸の合間に見た薄い膜を張る赤い目に見とれていると鼻先にキスをされたから、そのままにさせてみる。お前は俺を愛して居る。俺はお前に甘んじる。この意味が解るか。
「キスで終わりか?」
「…そういう気分じゃ無え。」
「そうか。」
生殺しなんて言葉はあまりに無様だから言わないでおこうか。少し息の上がったユースタス屋の背へもう一度腕を回しながらそんな事を思った。
これ以上無えってくらい身を寄せられたからどうしようもなくなって睦事を囁いてやるとどうやら気に喰わなかったらしく肩口に噛み付かれた。
「なあユースタス屋、」
「……。」
「俺は生きては居るんだが。」

お前等程綺麗でも不器用でも無えんだ。

続く言葉は飲み込んで
再び背中を撫でてやりながらさてどうしようかと考える。
「トラファルガー。」
目を覗き込んだユースタス屋の顔は歪められていて、もう一度キスがしたいと思った。

「もう喋んな。」
言われて笑って耳を食む。
ああそうかお前は最初に「忠告」したもんな。

「……アイアイ、キャプテン。」
「馬鹿が。」

ふるりと揺れた身体をもう一度抱き直して目を閉じると
こいつがふ、と笑って息を吐いたのもつかの間、じんわりと肩口に拡がる水気と温もりにこいつの意思の在り処を知る。



いいんじゃねえの、別に。
そう脳の裏側で宣う馬鹿な俺に叱咤して、ただただ海と俺とを愛す目の前の人間を慈しもうと体温は上がるばかりだった。



end.


甘いの書きたくて書いたのにいつの間にかまた暗くなったという。
















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