※血迷いからの似非女王様プレイ
※でもプレイって言えるほどでも無い
自己責任でお願いします














「第一、性分が合わ無ェんだよ俺達は。」
煽っていた酒瓶から小さな水音を伴って口を離したユースタスが舌で唇を舐め取りながら低く溢した。ちゃぷ、と揺らした酒瓶の中では控え目な波が立ち、残りの少ないアルコールを示している。手にしている男はほんのりと白い肌を染め上げ、片足は机に寝そべらせたままずりずりと良質な革の張られたソファの背凭れへと沈み、細く開いた濡れた眼差しを向に座る男へ向けた。瓶を力無く握る腕はだらりと床へ下がり、中のなけなしの水分はフローリングへと申し訳無さそうに染みて行く。ああ、勿体無ェなあと心にも無い事を口を象るだけで止めたトラファルガーが殺戮屋に叱られるぜ、と喉で笑いながら呟き椅子から立ち上がる。ユースタスはそれに返すでも無く口元を乱雑に手の甲で拭いつつ近付く男を不愉快そうに見上げた。豪快に摂取したアルコールにより大胆に晒された上半身はしっとりと汗ばみ、次いで置かれた浅黒い腕に腹筋がぴくりと跳ねる。撫でるようにして筋をなぞる指に赤い男の不愉快度数は上がるばかりだ。
「だから、…これだっつってんだ」
鼻先がぶつかる程度に覆い被さったトラファルガーの近付く口へ構う事無くユースタスは唸り、腹を這うトラファルガーの腕を熱い手の平で力無く握った。ぴたりと動きを止めたトラファルガーは軽く目を見開き、寸でで止められてしまった行為に不機嫌な表情を作る。何がだ、と思案すれば直ぐに冒頭のユースタスの台詞が浮かんだ。酒に耽ると何かと意味の無い事を口走るものだから今回も受け流していたが、どうもそれがいけなかったらしい。目の前で未だ唸る男は酔ってはいるが何かを自分に理解させたいようだ、とトラファルガーは時間にして一瞬で解釈しユースタスの耳元へ顔を埋める。どうしたんだよ。脳に響かせる様にして吹き込んでやればぶるり、と頭を緩く振ってユースタスはやはり不機嫌を顕にしたままトラファルガーの肩を掴んだ。頬を掠めた赤髪に気を向けている内にその指先へ力は籠められ、気付けばトラファルガーの視界には見慣れぬ敵船の天上と擦れたルージュを吊り上げ、悪戯が成功した子供の如く笑う男が広がって居るのだった。
両肩に遠慮無く体重を掛けるユースタスの白い腕を見遣りトラファルガーが首を傾げる。悪くは無いアングルだが、何か企みを孕ませた様な男の空気が少々、気に障るのだ。
「で、俺達の何が合わ無ェって?」
乗り上げたままじい、と己を見詰める熱を含んだ目に素直に欲情しながら問い掛ける。鼻を鳴らしたユースタスがのんびり俺はな、と応えた。
「見下ろされんのなんざな、特にてめェなんか、胸糞悪くて仕様が無ェんだよ、」
「……」
「こうやって…見下ろす方が、おれは、すきだ」
覚束無かった呂律が段々と更に酷いものへなっていく。だが言いたい事は大まか理解出来たらしいトラファルガーは成る程と溢し、ユースタスに先を促した。
「で?ユースタス屋は俺を掘りたいのか。」
そんなつもりなど毛頭無いが。トラファルガーは解るようにゆっくり言ってやる。
「あ゙ァ…?ばっか野郎、」
誰が男なんかに突っ込むかよ屑。ユースタスはそう言って半ば微睡む瞳を揺らした。
此処で内心笑いが止まらないのはトラファルガーだった。遠回しに問い掛けてやれば目の前の男は女役に快感を見出だしているようで、攻守交代は御免らしい。だが乗られるのは嫌だと駄々を捏ねる。では今両肩に置かれた手の目的は?答えなど手に取らずとも明快であり、酒を煽った天下のユースタス"キャプテン"キッド様はいたく理解に容易いものだ、とトラファルガーは笑みを深めた。

「じゃあ、お前はどうしたいんだよ。」
あくまで惚けた振りをして頬を撫でてやり、下では自分に跨がるユースタスの股間を膝でゆるりと押し上げる。きっかけを作ってさえやれば、あとは雪崩れ込むだけなのだ。まあ「たまには」そんなお遊びに付き合ってやっても良いだろう、トラファルガーはそう思い我ながら応用の利く性欲だと一人ごちた。
「、」
突如襲う刺激へ一寸顔を歪めたユースタスだが直ぐ様にやり、と唇を湿らせ笑いながらトラファルガーを挑発し「おい、」と低く且つ艶やかに膝を咎める。
「てめぇは手出し、すんじゃ無ェよ」
命令はすべからく嫌いな男だが素直に手を下ろし膝を止めた様子に気を良くしたユースタスはそのままソファへトラファルガーを押し倒し、腹へ座り込むなり己の腰に巻き付くごつごつとしたベルトやサッシュを緩慢に取り払い始めた。酒のせいなのか中々能率の悪い作業だったが言われた通り手は出さない。ようやく空色のサッシュが解かれた時、ユースタスはしげしげと手にあるそ
れを見詰める。そして思い付いた様にビリビリと気兼ね無くそれを縦に裂いてしまった。
大体の憶測は付いては居たが、この赤い男は加減と言うものを見失い勝ちだな、とトラファルガーは背後で血が止まる程に戒められてしまった両手首を案じる。そんな事を思う間にも大小様々に裂かれた腰布は鼻歌を歌い出しそうな程上機嫌のユースタスにより、続いて口元を縛り付けられた。仕上げに目を覆い隠す様にして巻かれたそれにここまでするかとようやくトラファルガーは眉間を寄せるのだった。
「はは……似合いだな、おい。」
「……、」
いつもは五月蝿い男の口を布が邪魔して喉が動くばかり、更には手も目も塞がれた様子にユースタスは大層興奮を覚えたらしく、再び馬乗りになり顔を下ろす。熱い息を吹き掛け耳を詰る様に舐め上げ、そのまま褐色の肌を味わった。首筋から香る異国の香が鼻孔を満たし、嗅ぎ慣れた男の匂いが今は自分の下に在るという事が高揚感を生む。鈍く光るピアスに触れればひやりとしていて、火照る指先が痺れた。ユースタスは口にこそしなかったが気に入りであるそのピアスを口に含み、気が済むまで転がし、噛み千切りたい衝動を抑えつつ口を離した。たっぷりと時間を掛ける耳から首筋への愛撫に僅かだが眉を寄せたトラファルガーという男はこうして余裕を持って見下ろせば中々にそそられるモノが在る、とユースタスは熱に浮かされながら喉を鳴らした。口布に構わず口を押し付けてやり、べろりと入りもしない厚い舌を被せると空色のそれが濃いブルーへと湿って温さを持つ。好き勝手這う舌に、背後で押し潰されたトラファルガーの指先がぴくりと動いた。じゅ、としとどに濡れた布から音を立てつつ唇を離したユースタスが腰に当たるトラファルガーの熱に気付き、目を細めて其処を撫でる。素直な反応と汗を浮かべたトラファルガーは男として当然だったが、ユースタスは不覚にもこの男が可愛いものだという錯覚へと足を踏外し欠けた上にぞくぞくと劣情を煽られた様だった。息を荒げながら牡丹を飛ばしつつトラファルガーの前を寛げ、ボクサーの上から口に含んでやったり、頬を擦り寄せてはひくつくトラファルガーの喉元の反応を楽しんでいる。トラファルガーからすれば不自由な視界が他感器を鋭く敏感にさせ、平生よりも募る余裕の無さが際立った。直接的な刺激を寄越せと言ってやりたいが今のこの男へそんな事を言えば嬉々としてナニを縛り上げるだろうし、何より口布が邪魔だ。「お遊び」も程々だな、と息を細く吐く事でやり過ごす事を目指した。
再び顔を上へ持ってきた男がちゅ、と髭へ口付け顎下から舐め上げる仕草に堪らず腰を押し付けると喉で嘲いながら我慢しやがれ、などと言う。我慢ならないのはどちらなのか、すっかり勃ち切った自身をトラファルガーのものへと擦り付け出し、ズボンも脱いでしまった。先走りが互いの下履きを使い物にならなくさせて行く。濡れた感覚に小さく喘いだユースタスがとうとう一糸も纏わぬ姿になった事が下着の落ちる音で分かった。お前はそれさえあれば良いと言わんばかりの乱暴さでトラファルガー自身を取り出し、擦り付け出す。根本を握られたトラファルガーはユースタスの自慰相手さながらであり、ユースタスと言えば自分の感じる所を探してはトラファルガーの熱を感じ、達するのだった。
「は、んァ……」
「ッ」
快楽に染め上げた顔を近付ける間もトラファルガーから手は離さず、目元へ口付けている。長く身体を重ねて分かった事だがこの男は強面な癖をしてキスという行為が大の気に入りであるらしかった。口にはしないが最中トラファルガーにキスをせがむのも多々あり、濡れた赤い唇に更に欲情するのが常と言う所だ。そうなった今、ろくに舌も出せず相手の顔も見れないこの状況がトラファルガーには酷く忌々しいものに感じるのだ。「性分が合わ無ェ」。成る程酔っ払いが溢した言葉も中々に的を獲ていたもので、確かにこの「お遊び」に限界を感じている自分はまたまだ人間らしいじゃないかと小さく愉悦に浸るのだった。
「ン、」
吐精した脱力感のままトラファルガーで遊んでいたユースタスに小さく訴える様に唸りながら腰を揺すると未だ掴まれたままの根本に力が籠められた。
「勝手にイきやがったら、挿れ無ェ」
そんな事お前が無理だろうが、とんだ淫乱だと思うが口には出来ないトラファルガーが募る射精感に唾を飲む。伝った汗を舐め取られて随分遊ばれているなと暗闇の中神経が根刮ぎ感じるユースタスの息遣いと匂い、熱を追った。そして突如、口元に或る解放感が広がった。はらりと裂かれたサッシュがユースタスの手によって首辺りへ落ち、些か呼吸が楽になったのだ。途端に空気が入り込み、噎せ欠けたトラファルガーへ容赦無く黒く彩られた爪を持つ指が三本突き立てられた。
「、舐めろ」
噎せられず再び口を閉じた事で耳の奥が痛み、喉も可笑しな音を立てたが従順に舌を掴む指先をじっとりと湿らせ、食むようにして一本一本舐め上げ、時折甘く噛んでやる。根本迄吸ってやると大袈裟な程いやらしく喘ぐ男が腹の上で腰を跳ねさせ、白濁をトラファルガーのパーカーへ溢した。
「ゥ、ん」
引き抜いた指は糸を引き、そのままユースタスが自身の後ろを解す様に指を這わせる。半開きのままのだらしの無いトラファルガーの口を見遣るや否や待っていたとばかりに喰らい付いた。自分の指が良い所を掠める度にキスをしたまま声を上げ、トラファルガーの舌を噛む。ユースタスの犬歯を舐めてやると先走りが溢れてパーカーは色を変えた。そうしている間もトラファルガー自身はユースタスの手淫に犯されてはいるが達する事は許され無かった。
「は、ユースタス、屋…ッ…」
「……ア?」
「い、加減に、しろ、」
喉を仰け反らせたトラファルガーにユースタスは今夜一番の扇情を受け、舌を舐め摺った。目を隠したまま眉間を寄せたトラファルガーが確かに己の下で汗を流し、耐えている光景など今の今まで有っただろうか。指をぐちゃりと引き抜き焦らすかは迷ったが自分の限界も近かった事もあり性急に腰を落とした。
「ンぁ、あ!」
「ッ……」
温かい粘膜が平生よりも熱い気がするのは酒のせいか、焦らしに焦らされたトラファルガーが原因か、ユースタスの興奮からなのか。おそらくは全てであろうが何れにせよ気持ちの良い事に変わりは無かった。深く腰を落とすユースタスがトラファルガーの腹に手を付き、好きな様に揺すり始めた。余裕を持って好きな様に緩急を付けられる快感に夢中になり、トラファルガーは背の下で完全に感覚を失ってしまった両手を爪が食い込む程握り締める。上擦ったユースタスの声が限界な事を示し、ユースタス屋、と呼べば目へ巻かれた布も乱暴に取り払われた。途端かち合う視線に涙の膜を張ったユースタスは久しく感じる澱んだ深い青と蔓延る隈にキスをし、トラファルガーの頭を抱き込む。そう言えば今日は弄ってやれなかったなと目の前の赤い飾りへ噛み付くと、一際大きく鳴いてユースタスは果てた。漸く達する事が出来たトラファルガーだが目の前の汗ばんだ白い胸と心臓の音に直ぐ様煽られ、ユースタスから非難を受けた。

「なぁ、ユースタス屋」
「は、……んだよ…」
慣れない上のポジションに疲れたのか息を切らしたユースタスが退こうとするとトラファルガーが腰下の拳でソファを叩きながら「いい加減外せ」と言った。使い物にならなくなる、と言う男に別に俺は構わないなどと言いながらも固く無造作に結んだそれを外してやる。そこで青く変色するほど鬱血の跡が付いてしまったそこを眺めるや否や、ユースタスの視界は反転する。

「、!?」
「ふふ、」

そこでユースタスが目にした男の顔と言えば凶悪な程に気を違えたもので。

「なぁユースタス屋、お前が言ってた事は確かに正しいよ。俺達は性分が合わ無ェ。だが身体の相性はこの上無く良いだろう?」

「どうも俺も、上じゃなきゃ落ち着か無ェらしい。お前だって下で鳴いてる方がお似合いだって事、分かっただろ。」


「合わ無ェもんは、合わせりゃ良い。」

落ちた布の残骸を手にした男の目は確かにぎらついており、擦れたルージュを漸く舐めとる事に成功しうっそりと笑みを深めた。 或る港の夜は長く、再び船員は度を上げて響く船長の声を効果など無しの子守唄とするのだ。



に喰わせたフォーマルドレス


END_



長い上に 似非もいいところで実にすみませんでした。













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