(保健室の先生×体育の先生)








「胡散臭ェ」

ユースタスとトラファルガーは同期として春から高校へ勤め始めていた。
ユースタスは愛想に欠けてはいるが持ち前のスポーツマンぶりと不器用さの中に垣間見える魅力とやらが生徒の好感を早くも買ったらしく、男女ともに人気を博している。
対してトラファルガーと言えば顔は良いが不気味さを否めない風貌とその男には似つかわしく無く並べられた白熊グッズ、極めつけには新任早々実に怠惰な仕事態度に耳に毒な噂ばかりが蔓延っていた。


「何が」


ユースタスもその評判を知ってはいるがこの二人、ユースタスさえ疑問符を浮かべてしまうが所謂恋仲にあった。トラファルガーへ尋ねれば「自然の摂理」、ユースタスへ尋ねれば「なんかもう考えんのも面倒臭ェ」、と言った所だろうか。とにもかくにも少々ずれ込んでしまった男二人の関係を知る哀れな人間は目下、恐らくゼロを更新し続けている。否、していて欲しい。


保健室に在るべきかは甚だ謎な上質なソファに寝そべるジャージ姿のユースタスは眠け眼を不機嫌そうに細めながらトラファルガーを見詰めていた。トラファルガーは気に入りのマグを口へ運びながらローラーの着いた椅子を気紛れに転がす。昼休みだが生徒の寄り付かない保健室と周辺は閑散としていて、ぴよぴよちちちと雀が鳴くばかりだ。


「白衣、眼鏡。」

緩慢に指を持ち上げ指しながらユースタスは言う。無い話題ゆえに常日頃から思っていた事をぼやいた迄だったが予期した以上に詰まらないなとユースタスは欠伸を溢した。

「脱がせてくれんのか?」
マグを置いたトラファルガーが立ち上がりユースタスへ近付いた。何を見当違いな事を、面倒臭い野郎だとばかりにユースタスが睨み上げ、序でに時計へ目を移した。午後の授業は何だったか、緩い思考が不意に阻まれる。


「……、んだよ」
「案外似合うかもなぁ、ユースタス先生」

耳の上とこめかみに、違和感。目の前に近付いた顔を眺めると眼鏡を外した隈の瞳が二つ。

「あ?……度入って無えの?」
「ああ」
「伊達かよ、意味分かんねえ」
「似合うから良いだろう?」
「アホか」


慣れない目元にユースタスが眉間に皺を寄せながら瞬きを数回。そんな事をしている内に覆い被さる白衣の男が口付けを仕掛けては鼻先に当たるフレームや赤い男の反応を楽しんだ。

徐々に深くなる口付けと、ソファに沈むジャージの男。煩わしいとばかりに白衣を脱ぎながら乗り上げる男の背後のスピーカーから昼の終わりを告げる鐘が鳴る。


「体育、次いでに保健も此処でやってけよ。」
「発言が親父臭ェ」


生徒の寄り付かない昼下がりの部屋。まあいいか、と妥協してしまう眼鏡を掛けた赤い男が上等、とばかりに腕を回す。
















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