(※猫ロー×飼い主キッド※)
(※トラファルガーに猫耳と尻尾が+αされてます※)
(※現パロスメル※)


















「ただい、ぶっ……」

太陽が役目を終えて姿を消す。仕事から帰宅したユースタスは部屋の扉を開けるや否や顔面に抱擁と言うには攻撃的過ぎる且つ的外れなタックルを頂戴した。律儀にも口から零れ欠けた帰宅の言葉が濁り、その衝撃の根源を瞬時に察知した彼は青筋をぴきりと浮かべる。間もなくしてお次はその顔面中へべろべろと人間のそれとは駆け離れた舌の感触 所謂「おかえり」を受けた。
「遅え、ユースタス屋。」
「っの…離れやがれ!」
「いってぇ、」

ユースタスは唾液に塗れた顔からその三角の黒毛の塊をひっ掴んで距離を置く。
そうして漸く開け放ったままであった扉を荒く閉めるのだった。



ひくひくと、ユースタスから見れば憎たらしく動く耳が揺れる長い尻尾とともに飼い主の帰宅を待ち侘びていたとばかりに存在を主張している。ユースタスが手を離せばすぐにまた腹へとトラファルガーの腕が周り、ぎゅうぎゅうと頭と身体を擦り付けては構え触れ撫でろと甘えた。
これは最早帰宅後恒例のやり取りと化していた。

「なあユースタス屋、撫でろ。」
「まず着替えさせろ馬鹿。」
「…んぅ、」
「……。」

眉間に皺を寄せながら耳を軽く引っ張ればトラファルガーは不機嫌そうに喉を鳴らし、すんすんとユースタスのスーツへ鼻先を埋める。因みにこの二人、未だ玄関先での往生である。

「第一猫に留守番頼むってのがお門違いも良いとこだ…」
ぶつぶつと鼻先を埋めたまま並べる空言はユースタスのスーツへと吸い込まれた。
「黙れエセ猫。」
「……あ」
「…んだよ?」

溜め息を吐きながらタイを緩め、くんくんと匂いを嗅ぎ回る離れないそれに早くソファへ沈んでビールが飲みたいと思考を飛ばしていたユースタスはくっついたまま低く短く唸ったトラファルガーへ返す。

「…またアイツの匂い、付けて来やがった。」
「……。」


猫耳の男は忽ち頗る不機嫌な顔を作り、スーツを掴んだ。皺が寄るから止めろと舌打ちをするユースタスは、近い距離で働く金髪の幼馴染み兼同僚の姿を思い浮かべる。そうして次に吐かれた言葉に仕事疲れの癒しと冷たい缶ビールは程遠いと己の甘さを嘆くのだ。

「風呂入るぞ、ユースタス屋。」

この狡猾な髭面猫男、
風呂は飼い主に入れて貰わないと入らない質である。












Mr.マタタビが唱える家きの法則















白く温かい湯気が沸々と立ち込める浴室では、垂れた赤髪の男が見下ろす黒髪へと指を滑らせてはごしごしと丁寧に泡を撫でて居る。しっとりと濡れた三角の耳も、泡が入らない様念入りに擦ってやるのだ。

洗われて居る男は酷く機嫌良さげにごろごろと喉を鳴らしては濡れた長い尾で背後のユースタスの腹や胸をたしたしと軽く叩いた。慣れたもので、ユースタスは気にも留めずにシャワーコックを捻り湯加減を確認し、柔らかく泡を注ぎ落とす。

ぶるりと短髪を振って水気を切ったトラファルガーは次身体な、とスポンジを手渡した。ここで仕方無しと洗ってやるユースタスと万年発情猫との攻防がゴングを鳴らすのは玄関先の熱烈な「おかえり」同様恒例の事だが、大概ユースタスが尻尾を引きちぎれんばかりに引っ張りお預けを喰らわせてベッドへと延長される。水場では僅にユースタスが有利な立場に有るのだ。ベッドの上となるとまた別の話である。

無駄すぎる体力を浪費して漸く湯船にありつけたユースタスは息を吐いてそれに浸かった。次いで入ったトラファルガーはユースタスの足の間へ無理矢理座り頭を飼い主の顎下へ預ける。

「なあユースタス屋、今日の入浴剤、良い香りだろ。」
「んー。」

シロクマ印だ、とにやにや笑いながらぱしゃぱしゃと尾を揺らして居る。乳白色の湯が波紋を作ってはユースタスの白い肩へ跳ねた。
顎下へ当たる濡れた耳が擽ったくも有るが、まあ悪くはねえな、と風呂特有の楽観的思考で好きにさせてやる。

いつになく饒舌なトラファルガーはユースタスの鎖骨らへんに頭をすりすりと擦り付けながら飼い主の手を弄り回したり指を甘く噛んだりと入浴を満喫している。

「…おい、」
いい加減擽ってえ。
重くなっていた瞼を薄く開けて言うとトラファルガーは耳をひくりと動かして口を開くのだ。

「だって俺達今、同じ匂いだ。」

ああ最低限の会話のキャッチボールもとんだ外れ球だ、とげんなりする赤髪を余所に、トラファルガーはぐるりと足の間で身体を捩り、ユースタスの頬へざらつく舌を当てた。

「……、」
目を細めてにんまり口角を歪ませつつ、やらねえから安心しろよと甚だ疑わしい台詞を吐いて白い二の腕へ尾をするりと巻き付けた。 そんな中この胡散臭い猫が少しばかりかわいいもんだと思えてしまうあたり、この飼い主も相当に螺旋を描いた道をのらくら歩いて居ると言えるだろう。


逆上せる、と象ろうとした唇は見事に緩く食まれ、立ち込める湯気の隙間に映る赤と三角の黒はとあるマンションの一室にての歪んだペットと飼い主、知られざる愛の実態である。




end-


10000企画にて七個様よりリクエスト頂きました、猫ロ×飼い主キッドパロディでした^^*
絵でちょこちょこ描きながら、いつか文も…!と目論んで居りました。ので、非っ常に楽しかった、です…!
七個様、この度はリクエスト有り難う御座いましたm(__*)m
















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