(※宇宙脳ファルガー)
捕らえられた手首は持ち主の訝しげな視線を受けながらも抵抗が無い。その視線が次に向かうのは惟うに80センチの距離を持たせた俺の顔、詰めれば崩れる距離はまだ勿体無いと思い至り掴んだそれを引寄せる事もまた、無かった。
僅に持ち上がる口端を感じながら隠れない好機をユースタス屋の手の甲を撫でる事で顕にすればぴくりと引く、そうしてまたその男らしいけれど爪先まで綺麗に手入れの行き届いたそれを引いた分だけ引き寄せた。相も変わらず俺に向けられた赤い目を初めてじい、と絡ませると強みを増した逸れないユースタス屋に腹の疼きを酷く煽られ堪らなく喉が鳴るのだ。
視線を戻さず手首を片手に捕らえたまま空いた手で鉄の輪をひとつ、嵌めてやる。錠が重なる振動に極めて短い鎖が揺れ、少しばかりしゃらりと安い音を上げてそれは空気に飲まれた。そうしている内にもう片方の輪をユースタス屋を掴んで居た己の手首へと通した。再び同様の安さを見せて、その手錠は俺達の距離を60センチ近くして沈黙へと鈍い光を控えめにちらつかせた。
「…何がしてえ」
「なあ、欲しい。」
「……。」
しげしげとユースタス屋は嵌められたそれを腕を持ち上げて眺めては不快気に舌を打つ。ユースタス屋が手を上げれば勿論呼応して俺の腕が上がり堪らず笑い声が洩れた。楽しい。愉しい。
「ユースタス屋、此処にひとつ、鍵が有る。」
「……。」
「さて、俺はこいつをどうする?」
「…満足したら外すってんならさっさと済ませろ。」
「ふふ、残念。残念だな。堪らなくそそる回答どうも有り難うユースタス屋。でもそれは問にそぐわない。」
不思議そうに首を傾げるユースタス屋を近くなった距離で眺めて眼球を舐めた。睫毛を唇で食んでから通った鼻筋へ唇を滑らせ、びくりと引く身体を手錠を利用して引き寄せては何度も口を付けては離す。最後にもう一度濡れた眼球を一舐めしてやって鍵を唇に挟む。その目で、ようく見てろよ、ユースタス屋。
「………!」
ごくり。
俺の喉を通過した小さな異物感を確かめもう一度ユースタス屋を眺めると俺の唾液に濡れた目を見開いて居た。ああ、良いなあ。その顔。
この距離を忘れるなよ、そう呟いてから罵声を荒げようとする唇を舐めてやった。
右ポケットに入った鍵の存在を教えてやるのはまだ、早い。
「目にしたもの全てを信じる事は良い事だ。」
「ただ、その信じた物は自分が勝手に造り上げた根拠の無え仮定だって事を忘れちゃいけない。」
(誰もこれがこいつの鍵だなんて、言っちゃ居ない。)
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意味分からないです。
手錠で遊ぶローさんを書きたかったけどカオスになって没
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