「永遠ってのはつまり、そうだなァ、うん、願うとか待つとかそう云うV-ブイを求めてるわけじゃあなくてよう。あ、このプレゼンのコピー50部、明日までに宜しくね。」
お前の頭部の生殖的意思に永遠が無ェのはようく分かったからとりあえず殴らせてくれないか。
只々弛緩して行く
ブルース・プリングな僕ら
昼下がりの会社の屋上は嫌いじゃ無い。左手には買って口を付けないままの缶珈琲、右手には口が寂しい俺の相棒。くしゃりと握り潰した箱は足元に転がって居る。
全く腹立つ位の秋晴れに無性に苛々としては奥歯を噛んだ。駄目だ、今の俺には彼奴が、アイツがあいつが、足りない。
「またフケてんのか」
ああ、お前って男はどうしてこうも
「休憩だ」
ユースタス屋、ねぇユースタス屋。
お前も俺と同じことを思っていたら。
寄りかかって居た壁の隣に位置する古びた扉から現れたのは俺と同じ、まだ新しさ、つまり新人を象徴するかのようなパリッとしたスーツに身を包んだ赤髪の男だった。
俺を見るやいなやテンション下がりましたって雰囲気丸出しにしやがって全く可愛い奴だよな。
「…ハゲがお前を探していた」
「いつも従順でお利口さんなトラファルガーくんは本日は開店休業日」
「お前なあ」
ああもう五月蝿ェうるせえ。せっかくこの狭苦しい会社という範囲内での俺とお前二人きり。これを最大限に利用しない奴なんて馬鹿げた話だと思わないか?
「ユースタス屋、」
「う、わ、」
「…お前良い匂いすんな」
「んだよ離せ、」
「……んー、」
「……!…っ!?」
するりと手首を掴んで壁に押し付けた可愛いこいつからは金木犀の香りがした。
午前は居なかったことから判断して、取引先かその途中にでも生えて居たのだろう。
それすらにもくらくらとして気付けば唇を押し付けて居た。小学生みてぇなキス。
固まる事十数秒、よし、頑張れおれ、ここで止まれ殺されるぞ。
「金木犀の香りは嫌いじゃねえ。それがユースタス屋からするってんなら尚更だ」
身体を放すと案の定飛んできた右ストレートを避けながら首まで真っ赤な奴に笑い掛けてみる。
「心配して探しに来てやればこれだ。もう知らねえ。」
「まあそう言うなよ優しいユースタス屋。そうだ、永遠って言葉を考えた事はあるか?そいつに願うとか待つとかを求めるのはばかな話なんだと。まあハゲ上司の話だからそこはどうでもいいんだ。俺が言いてえのはまああれだな、そろそろお前が素直になってもだーれも怒らねえし悲しみもしねえ、ただ一人の人間が喜ぶってことだ。そこに俺は永遠を願いもしねえ、永遠に待つ気もさらさら無え」
「………」
ユースタス屋は拭っていた唇を少し震わせて出ていこうとする。なあ、そんな泣きそうな顔をしてくれるなよ。せっかくガキ染みたキスで止めてやったってのに。
「またな」
「…おれ、は、」
ユースタス屋は何かを言い欠けて、忽ち罰の悪そうな顔をしては扉の奥へ消えた。
まあ何を言ったかなんて丸見えだったけれど。
「…ふうん」
ふう、と吐き出した煙は空に上がってはゆるりと白に溶けて消えた。見上げたそれは希望の色なんて誰が言ったのか。
「いつまでも青い俺らじゃ、居られねえんだ」
ああ、彼奴の、金木犀の残り香がする。そいつがどうしようもなく愛しかった。
握ったままの缶珈琲は随分とぬるくなっている。
end-
現パロで会社員なロ→キド…。
昔別ジャンルで書いたのをリメイクやら何やらしまくりました
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