※外科医能力発動
※少々痛



















ロシアンブルーは今日も














夜中。自室。
眠れずに机の上に肘を着きランプをただ眺めて居た。聞き慣れた波音に漸く瞼が重く感じた頃に奴は来た。

「……。」

静かに開いた扉、奴の奇襲はもう今となっては慣れたものだから軽く一瞥してから視線を戻す。灯りは此方のランプひとつな上に帽子に陰を作られた男の表情は見えない

「何しに来たか知らねえが、俺はもう寝る。妙な真似しやがるなよ。」
「……ユースタス屋。」

音無く接近していたトラファルガーが予想以上に近かった。万年床へ膝を着いた際にこいつ独特の異国の香が鼻を掠め、気が緩む。畜生眠い。
瞬間、暗がりが、揺れた。

「ッぐ、!」
「……フフ、」

目を見開く一瞬の内に口端を容赦無く殴られ脳が揺れる、
そのまま床に受け身を取った。顎に伝う生温い液体、舌が痺れる鉄の味に我に返った。

「…に、しやがる…!」

鈍い音が響く。俺に馬乗りになって尚黙るトラファルガーにお返しと言わんばかりの一発を右頬に入れた。
垣間見た、姿勢は崩さないまま血を垂らしながら見下ろして来る奴の目は狂気染みて居る。己の舌でそれを舐めとりながら口角を上げた男に背後が冷たくなる。

「お前の血を、な。」
「…な、に、…」
「俺の手で出したくなった。」
「ざけんな、!ぅ、あ、…ッ」

ぼそぼそ話しながらいつの間にか鞘から抜かれていた刀が脇腹や二の腕に薄く傷を付ける。間を持って追ってくる鈍い痛みに顔を諌めた。同時に耳を舐められて傷跡に指を捻り込ませて来る。クソ、痛、え。

「…ふっ…やめ、ろ!」

殺すぞ
そう言って殴って蹴って暴れた。悪趣味の極みだろう、トラファルガーと言う男の思考を理解するなんて馬鹿な真似は随分と前に棄てたのだ。こうして関係を持ち続けて来た自分にも非が有るなんて承知だ。だからこそ質が悪い。

「…ったく、楽にしろよな…。」

顔面に痣を作り鼻と口とついでに瞼からも血を流しながら不機嫌顔になり独特の手つきを翳す。おい待てそれは、!



「…やべぇユースタス屋、」


「……てめェっ…」
「凄く、興奮する。」

どうしようか。 そう宣いながらまた顔を近付けて来た変態に茫然とした。
瞬く間に取り上げられた両足と右腕は寝床の上に放り投げられびくびくと震えて居る。紛れもなく俺に従事していたそれだった。申し訳程度に残された左腕は血と噛み跡まみれで最早飾りに過ぎず、床に爪を立てては嫌な音を立てた。

「安心しろよ、殺す訳無えだろう。」
「あ、ァ、…!」
「俺が嘘を吐いた事があるか?」

100万回位あんだろうが。
煽りたい口からは情けない単音しか出て来ない。痛みと緩く疼き出した快楽に目頭が熱くなる。

「あんまり白えから…最初は傷付けるもんかと思ってたが、」

胸と腰をまさぐりながら舌に強く噛み付いて来た。お互いに口内で血を流しているから酷い味だ。壁の切傷を吸って舐め回してくるから呼吸は出来ねえし滲みるしで目が回る。おかしくなる。

「ん、ぅ、ぅ…!は、ァっ…」
「はぁっ…綺麗だなあユースタス屋、」

痛えのか気持ち良いのかも分からなくなって薄く開いた視界に入ったのは痣だらけの顔を幸せこの上無えって位歪ませ微笑むこいつの顔。


また今夜色んな物を諦めるんだろう俺は、そう思いながら目の前の変態の口元の痣を舐めてやった。

「…悪く無い、だろう?」
「馬鹿言え…変態が…」


起きてからキラー達に尋ねられるだろう裂傷の数々の言い訳をぼんやり考えながら熱を受け入れた。
畜生が。



(垣間見たお前の青黒い目の奥に「それ」を見つけちまったもんだから)
(浴びた血液の汚さに吐き気がして、お前の赤が欲しくなったから)
(お前の全てを知れば俺は、死ぬんだろう)
(殺さない様に愛す術を誰か、)


『ああ、聖母×××は今日も随分鬼畜な事で!』



end-

















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