ぼーっと誰かを待っている。
明るくもない細い道。目の前にはおじいさんが、向こうからは赤い服の男の人が歩いてくる。
あたしは誰を待ってるんだろう。
ふと足元に視線を落とす。
その瞬間――
「…こんばんは。」
そう耳元で声がした。
嫌悪感に鳥肌がたつ。それは知らない声。
すぐさまその場を離れると、そこにはさっき視界に入っていた赤い服の男が立っていた。
ニヤついた表情を浮かべ、あたしの方へ歩いてくる。逃げても逃げても距離は変わらない。
男の手があたしの鎖骨に触れる。
『………っ…!!』
声が出ない。
誰かの名前を呼ぼうとしても、声が出ない。叫ぼうと必死に息を吸うも、何かが引っかかって声が出なかった。
男の手が迫る。
その時、捉えたのは金糸の髪。
『……っ、三蔵!!!!』
『…っ、はぁ…はぁ…。』
自分の声に目が覚めた。
『………ゆめ…?』
耳元で聞こえた声を思い出し鳥肌がたつのが分かる。あまりにリアルに感じたそれに、慌てて起き上がり周囲を見回した。
『…あ……。』
「……何をでけえ声で呼びやがる。」
隣に座るのは最後に見えた金糸の髪を揺らす三蔵だ。夢の中の男はもちろんいない。
少し離れた場所で寝る悟空たち。逆隣には眠るリク。
『ゆ…、夢…みたの。……なんか、怖いやつ。』
未だばくばくする心臓を抑えながら告げる。いつもみたいに言葉が出てこない。けど、今はちゃんと話せていることに、少なからずほっとする。
「で、なんで俺の名前叫んでんだ。」
『…三蔵がいたから。』
「……は?」
夢の男とは違う、低く心地良い声に大きく深呼吸をした。
『怖くて…誰か呼びたくて。けど、声が出なくて。…そしたら三蔵が見えたの。気づいて欲しくて必死になって叫んじゃった。』
言葉にするとひどく滑稽な自分の様子に、思わずけらけらと笑ってしまう。『三蔵がいてよかった。おかげで目が覚めた。』と続けると、その大きな手があたしの髪をくしゃくしゃにした。
「……おまえの声はでかくて敵わんからな。」
『ごめん。』
謝りながらも三蔵の手の温かさに笑ってしまう。
三蔵はどうして起きてるの?
三蔵がどこで寝てたかなんてわからない。あたしが最初に寝ちゃったから。
けど隣じゃなかったのは確かだ。
だってあたしの隣はリク。
そして逆隣に寝るスペースはない。あたしはベッドの端で寝てるんだから。
『あたしうなされてた?』
「………さあな。」
誤魔化し方が下手くそなんだよ。
そんな三蔵にけらけらと笑いながら思った。
あなたのおかげで。
(あたし、どんな夢見てたんだっけ。)
これ実際見た夢です。
ほんと怖かったーーーー!!
管理人が呼んだのは友だちの名前でした。
もちろん自分の声で起きました。(笑)
起きた時に慰めてくれる人はいませんでした。(笑)