「ハルー、手伝ってくださーい。」
八戒があたしを呼ぶ。
手伝うって言っても、八戒はあたしに難しい仕事をさせない。単純な、誰でも出来るようなことだけ。それでも頼ってもらえて嬉しいから、八戒のもとへ駆け寄るんだ。
「ハル、前より上手になりましたねェ。」
『ほんと!?』
包丁の使い方は八戒に教わった。ジャガイモの皮むき、最初は皮を厚く剥きすぎて、身が半分程になってしまったこともあった。
褒められたことが嬉しくて、緩む頬が抑えられない。
八戒はそんなあたしを見て、穏やかに頭を撫でてくれる。
そんな八戒が大好きだ。
もちろん八戒もあたしたちのことを大切に想ってくれていることは一目瞭然だし、十分伝わってくる。
それは恋愛じゃなくて、保護者?…保護愛のようなものだと思う。
あたしたちが5つ以上年が離れてるから?
あたしたちがこの世界の人間じゃないから?
あたしたちがかわいそうだから…?
そうであってもなくても、きっと八戒はあたしたちを大切にしてくれた。今みたいに。
『ばかだよねぇ?』
だって普通、見知らぬ子どもを助ける?
意味わかんない魔法使って、よその世界から来ましたーなんて言うようなとんちんかんな双子にここまでしてくれる?
そんな人、探したって簡単に見つかるはずないよね。
「誰のことです?」
きょとんとあたしを見下ろす八戒に、あたしはくくっと笑みをもらす。
『八戒、あたしたちがお荷物になったら早めに手放した方がいいからねぇ?』
早めじゃないと、あたしたちが辛いからだけど。
『八戒?』
見上げるとぷっと吹き出して笑う八戒。目を細めて穏やかに笑っていた。
思わず首をかしげると、笑みを浮かべたままに、あたしの頭をくしゃくしゃっと撫で回す。
「そんなことしちゃったら本当に馬鹿ですよー。」
「馬鹿じゃ済まないですけどね。」と依然と笑顔の八戒。
…なら結局どっちに転んでも
『やっぱり八戒はばかってことだねぇ。』
「やっぱりってなんですか?」
ありふれてる大切なこと
(君がばかでよかった)