「こーやってみんなで飲んでんと、やっぱり何かしらのイベントごとがあったりするもんさね。」


グラスを片手にいつも以上にへらへらしたラビの発言に、同じく顔を赤くしたアレンが首を傾げる。

「イベントって何ですか?」


目の前のテーブルには幾つもの空き缶、空き瓶が転がっており、それだけのアルコールを彼らが摂取したことが確認できた。

ラビはアレンの肩に腕を回し、ガバッとを引き寄せると、こそっと耳打ちをする。と、言っても酔っ払いのため、小声とは言えない。



「酔ったハルがめちゃめちゃ甘えてくるとか最高さ〜。」

「そ、それは…。」

「今ユウも想像しただろ〜!!」

「うっせえぞ、馬鹿兎!!」

酒と思考で顔を染める神田に、アレンがじとっと視線を送った。それからは男子たちは、ニヤつきながらイベント妄想に耽る。


「顔が真っ赤になっちって、可愛いんだろーなぁ。」

「普段の照れが入ったそれとはまた別物ですもんね。」

「そうそう!向こうも力入んねえからってふらついちゃったりして〜。」

「………。」



三人の視線は自然と向かい側に座る女子たちへと移る。そこへは今リナリーしか座っておらず、ハルはお手洗いのようだ。リナリーも相当量飲んでいるため、もううとうとし始めている。

ハルが座っていた場所にも、リナリーと同様…否、それ以上の空き瓶が転がっていた。



「あれ…これ、結構酔っ払っちゃってんじゃない?」

「トイレで倒れちゃったりしてませんかね?」

「……ありえるな。」


イベントなんて言っているわけにもいかず、自分たちもふらふらのくせに、まだ帰ってこないハルの心配を始める三人。





―――ガチャ


部屋に入ってきたのは待ち人であり、三人はとりあえずほっとする。



『あれ?リナリー、寝ちゃったんですか?』

「え…、そーみたいさ。」


『毛布かけなきゃ風邪引いちゃいますね。』

「……そ、そうですね。」


『あと少しずつ片付けて行きますね。』

「…あ、ああ。」



何かおかしい。

リナリーに毛布をかけると、瓶やら缶やらを分けていくハル。その動きは手早いわけではないが、いつものそれと変わりない。よく見れば頬も彼らのような、極端な色を見せてはいなかった。



「…い、イベントは?」

「起こりそうもないさ…。」

「…………。」

考え込む神田は、片付けを続けるハルへと疑問を投げかけた。


「おい、それの中身は…おまえがひとりで飲んだのか。」

神田が指すのは今まさに手をかけていた多くの空き缶や空き瓶の数々。





『ちょっと飲み過ぎちゃいました。』

へらっと笑うハルは少し恥ずかしそうにうつむきがちに答える。その様子にきゅんと胸打たれるも、驚きの事実にそれに浸ることもできない。


「まさか…」

「ハルがザルだなんて…。」

「…思わねえだろ、普通。」





イベントなんてない
(それでも可愛いけど)








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