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―――タッタッタッ…
彼方此方で爆音が響く中。一人の少女がより一層激しい爆音が響く場所へ向けて走っていた。左足をかばうように走るその姿は、何とも滑稽に見える。
痛む足を抑えながらも、彼女が足を止めることはなかった。
「何度立ち上がろうと、貴様らはこのドロマアニムには勝てん!」
巨大な竜を模した搭乗型の装甲。中にはここエドラスの王であるファウストが搭乗していた。
それに対峙するのはたった三人の人間。
彼らは竜を滅するための魔法を使う滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。
「魔力を持つものが世界を制する!それがこの世界必然だ!!」
そう訴えるファウストに対し、全く怯むことなく飛び出す二つの影。
「自分に都合のいい理屈ばかりごねてんじゃねぇ!馬鹿野郎!!」
「必然だかなんだかしらねぇが、こんなものはおれたちがぶっ壊してやる!!」
離れた場所に立つ小さな少女も大きく息を吸い込んだ。
「天竜の咆哮!!!」
その攻撃をもろともしないドロマアニム。彼らの行為に魔力の無駄遣いだと嘲笑する。
「貴様らの魔力は私のものになるのだから。」
「おれの魔力はおれのもんだ!他の誰のものでもねぇ!!」
ドロマアニムに飛びかかるガジルだが、中から湧き上がる魔力に弾き返されてしまった。
「貴様らの魔力も、命も、すべてはわしの所有物だ!」
勝ち誇ったように笑い声をあげる王。怒りを込めた拳をぐっと握りしめるナツは、青筋を浮かべドロマアニムを睨みつけた。
「アースランドの魔導士…。尽きることのない永遠の魔力を身体に宿すものたち…、その中でもこやつらの……ドラゴンスレイヤーのこのデタラメな魔力…!よこせ!その魔力を!世界はこやつらを欲しておる!!」
地に伏せる三人。立ち上がろうとも手足に力が入らない。
「絶対的な魔法兵器ドロマアニムがある限り、我が軍は不滅なりィ!!」
自身の足で立ち上がることすら出来ない彼らへ、ファウストは容赦のない攻撃をしかける。
さらに空や大地、世界の魔力をドロマアニムへと集めていく。どんどんと上がっていく魔力に、ナツは歯を噛みしめた。
―――ザッ…
「「……っ…!?」」
「ハル…!!?」
倒れる彼らの前に立ちはだかったのはいつものようにふわりと笑うハル。珍しく傷だらけの姿に目をまるくする三人。
「ハル…だと……?」
少女の登場に声色が変化する。ドロマアニムを見上げる彼女には、傷だらけだというのに余裕がみえた。
『あんたが国王さま?あんたの娘のハルだよーん?』
にっと笑う少女にファウストは拳を握りしめた。
「ハルはどうした…」
『お姫さまならあたしが倒した。今ごろ街のどこかで寝てんじゃないかな?』
「……ハルが、負けた…だと?」
右手に魔力を溜めドロマアニムを睨みつける。
『あたしあんた嫌いだ。実の娘を脅してまで…っ、あの子がどんなに辛かったかなんて、あんたは知りもせずにこんなことっ!!』
地を蹴りドロマアニムを殴り飛ばすハル。搭乗していたファウストはもちろん、何とか立ち上がる三人も目を見開く。
「……ハル!?」
「ドロマアニムを…ぶっ飛ばした!!」
「ハルさん…っ」
栗色の瞳は細められ、土煙をあげるドロマアニムに向けられていた。
『……あたしの仲間たちに手を出すな!!』
「くぅ…っ」
懲りずに立ち上がるドロマアニムだが、確かな手応えを感じた三人は自然と笑みを浮かべた。
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