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「…今年のS級試験は、中止とする!」



マカロフの決断に様々な反応を示す受験者たち。その中でも一際大声で暴れる者がひとり…。


「なんでだよっ!!みんな諦めるんならオレをS級にしろ!!」



ぎゃあぎゃあ騒ぐナツを、離れた場所から見守るハルの前に影ができる。

「ちょっと…いいかな?」

『いいよ?どーしたの?』


見上げる相手、カナは言いづらそうに頭をかいた。ハルはただ彼女の続きを待っている。




「あたしがフェアリーテイルに入ったのって…父親がいたからなんだ。」

『そーなの?!カナが入ったのってあたしより先だったよねぇ?…会えた?』

嬉しそうに笑う少女に、カナもつられて微笑む。


「ギルダーツなんだ。」

『…えぇええ!!?』

大きな瞳をさらに見開いて驚くハルに、カナは眉を下げながら笑った。



『よかったねぇ!!』

「ああ。けどあたしが言いたいのはそこじゃないんだよ。」

『……?』


自分のことのように喜ぶ少女。ハルがこういう性格だってことは、話す前から知っていた。二人はこれでも長年の付き合いだ。



きょとんと首をかしげるハルに、カナは深く頭をさげた。

「ごめん…ハル!」

『えっ?…えっ!?』


謝られる理由が見つからないハルは、わたわたと慌てふためく。

『な、なんで謝るのぉ!?』

「あたし…ずっとハルが羨ましかった。」


『……え?』



カナの言葉にぴたりと動きを止め、彼女の続きを待つ。

「ギルダーツはあたしの父さんなのに、ハルとあの人がまるで本当の親子みたいに見えて…。あたしはずっとハルを羨んでたんだ。」

『…カナ。』

「ハルが悪いわけじゃないのにね。あたしったら酷いやつよね。本当に悪かったと思ってる。」


再び深く下げられる頭。ハルはゆっくりと頬を緩める。



『…そんなことどーだっていいよ。』

「……は?」

信じられない言葉に頭をあげれば、いつものようにふわりと微笑むハル。


なぜかこの表情を見ると、肩の荷がなくなってしまう気がしてならない。

『あたしこそごめんね?カナの気持ちそっちのけで、ギルダーツに甘えたりして…。』

「そ、そんなつもりじゃ…っ!」



『わかってるよぉ!けどあたしも謝っとかなきゃ気がすまないたちなの!』

へらっと笑う少女に、カナも思わず吹き出した。何とも強情な両者の会話。


顔を見合わせた二人は声を合わせて笑った。







「ハル!勝負だ!!」

『えっ、何?いきなり…』


雰囲気をぶち壊すことを大声で言ってのけるナツに、ハルは笑いながら応えた。

どうやらナツは現S級魔導士であるハルを倒せば、S級にしてくれ、とマカロフへと頼みこんだよう。


奥に見えるマカロフは笑顔でハルに向かってうなずいた。



「本気でやれよ!!」

『言ったよね?…S級になってからにしてって。』

「そのS級になるためにやるんだ!!」

飛びかかってくるナツに対して、ハルはため息をつきながらも、にっと笑った。








「ま、参りました…っ」

『素直でよろしいっ!!』


相変わらずの瞬殺っぷりに、他の仲間たちは声をあげて笑う。



こうして今年のS級試験は合格者0で、幕を閉じることとなったのだった。




帰り支度をする彼ら。
しかし彼らが天狼島から出ることは、出来ないのだった。









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