02
「お主ら青海人にとってここにある地面は当然のものなのだろうな…」
「そりゃ…そうだが」
「そうか……、だがこれは空には元々存在し得ぬものだ。島雲は植物を育てはするが生むことはない。緑も土も本来空にはないのだよ…」
土を掴むとさらさらと指の間から砂となって落ちる。
「我々はこれを"バース"と、そう呼ぶ。」
『………』
にこりと微笑むガンフォールにハルは何も言えず、ただ流れていく砂をじっと見つめていた。
「空に生きる者たちにとって、永遠の憧れそのものだ…」
「………」
ロビンやゾロも何も言わずガンフォールの言葉に耳を傾けていたが、空になった皿を置き唐突に立ち上がるハルにそろって反応をみせる。
「どうした?」
「……舞姫さん?」
『とりあえず神様ぶっ飛ばしゃいいんでしょ?』
「な…っ」
「……ふふ、どうしてそうなるのかしら」
狼狽えるゾロと笑いだすロビン。ハルはにやりと笑いガンフォールを見下ろした。
『あたしは黄金なんてぶっちゃけどうでもいい!元々神がどんなやつか確かめたかっただけだもん!』
「……お主」
『でもエネルだっけ?予想はしてたけど神には相応しくないみたい。人を力で支配するような神に、仕えてるなんてあたしは思いたくないもん。それに、空のみんなの"憧れ"がいっぱいあるこの島に絶対入っちゃいけないなんて欲張り過ぎるじゃん!』
言い終えた後ぐっと伸びをすると、騒ぐ仲間たちを見てけらけらと笑う。何ともマイペースな少女にゾロは呆れ、ロビンは微笑み、ガンフォールは目をまるくした。
『エネルがどんなやつか知らないけど、少なくともあたしは変な騎士の方が神様に見える。』
「……何故、そう…」
『勘』
けろりと簡単に言ってのけるハルは一度笑いかけると、ナミの飲むジュースにつられて行ってしまう。
「なんと……奔放娘だ…。」
「けど言ってることは簡単でわかりやすい。」
「単純って言い方も出来るわね」
三人の視線の先はナミの飲んでいたジュースを分けてもらったはいいが、口に合わなかったのかケホケホと咳き込むハルの姿だった。
「何だよ、ホントに冷てェよな!ゾロは…」
『……ウソップ、うるさい』
「わ…悪ィ」
真夜中に尿意を抑えきれずゾロに同行を頼むウソップの声に、目の開ききってないハルがふらりと立ち上がる。
彼女の低血圧を知るウソップは素直に謝るが、ハルは依然として眠りにつこうとはしない。
「……ハル?」
『………』
ふらふらと歩き始めるハルをウソップが慌てて追いかける。
「おい、待てって!」
『……な、に』
「ハァ?」
―――カーン……カーン…
繰り返し鳴り響く音にウソップは耳をすますと、それがメリー号からのものだと気づいた。
『……っ…』
「ちょ…おい!」
ドサッと倒れるハルを支えるも、ただ眠っただけだとわかりホッとする。それも束の間、何の音か確認しようと目を凝らしたウソップは誰もいるはずのないメリー号に人影を見つけてしまい絶叫したのだった。
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