02
―――ズルズル
「ねぇハル…、あんた平気なの?」
何も答えず歩き続けるハルは以前として二人を引きずっている。ナミは駆け足で追うがやはりハルは黙ったまま。と、そこへ…
「空島はあるぜェ…」
その声に視線を向けるとチェリーパイにかぶりつく、あの大男の姿があった。豪快に笑う大男に気づいたハルは歩みを止める。
「あんた、さっきの…」
「何を悔しがるんだ、姉ちゃん。今の勝負はおまえらの勝ちだぜ」
「……え」
『悔しがってな…っ』
「ハル!?」
ドサッと倒れるハルにナミが声をかけるが、空色の瞳はもう閉じたままだった。大男はそんなことも気にせず、ナミの啖呵を誉める。
入れ替わりに立ち上がったルフィとゾロ。倒れて動かなくなった傷だらけのハルをゾロが抱えた。
「あいつらの言う新時代ってのはクソだ…っ!海賊が夢を見る時代が終わるって?えぇ?」
両腕を空に広げ大男は笑う。手にした酒瓶を地に叩きつけ言い放った。
「人の夢は…、終わらねェ!!」
ルフィは黙って大男を見る。まわりでそのやり取りを見ていた人々は、大男の発言にゲラゲラと笑った。ベラミー一味のように。
「笑われて行こうじゃねぇか…。高みを目指せば出す拳の見つからねぇ喧嘩もあるもんだァ!なァ、おい!ゼハハハハハ!!」
「……行くぞ」
ゾロの言葉にナミは返事をすると、じっと大男を見るルフィを呼んだ。二人は何を言うでもなくただ見合う。
「ルフィ!!」
「おう、邪魔したみてぇだな…。行けるといいな、"空島"へよ!!」
それだけ言うと酒瓶を片手に立ち上がり行ってしまう大男。ルフィは何も言わず踵を返しゾロの後を追った。
「で?一体大怪獣何モゲラと戦ってきたんだァ?」
メリー号に戻りチョッパーが三人の手当てをする。目を覚ましたハルは船首の下に座り込んでいた。
「海賊だ、いいんだ。もう済んだから」
「あぁ」
平然と答える二人に一人声をあらげる。
「あんたたちがすんだってあたしの気はすんでないのよ!!何よーっ!男なら売られた喧嘩ぜーんぶ買って、ぶっ飛ばしちゃえばいいのよ…っ!!いいえ、こんなむかつく街…いっそ丸ごとぶっ飛ばしちゃえばいいんだわっ!」
「おまえ最初に何て言った?」
「過去は過去よ!!!どんだけ古い話ししてんのよ…っ、張っ倒すわよ…あんた!!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐナミを見ていたウソップが冷や汗を流しながら問う。
「おい…、なんで無傷なアイツが荒れてんだ?」
「さぁ、わかんね。」
「そうだ!空島の話は聞けたのか?」
純粋な気持ちで尋ねたチョッパーにあからさまに表情を変えたナミが反応する。
「そ〜ら〜じ〜ま〜ァ?」
「ひいぃ〜っ!!」
悲鳴をあげるチョッパーは慌ててハルの影へと隠れた。いつもなら優しく頭を撫でてくれるハルの腕が動かない。
「ハル…?」
『…え、チョッパー…。どうしたの?』
「……いや」
何も言わないチョッパーに首をかしげるハル。そこへ今までいなかったロビンが帰ってきた。
「随分賑やかね…、そんなに荒れてどうしたの?」
「なんだ、ロビン。どっか行ってたのかァ!」
「えぇ。服の調達と、空島への情報でしょう?あと舞姫さんの服も買っておいたわ。その黒い服だけじゃ大変でしょ?」
『……ありがと』
ナミは矛先をロビンへと替えて怒鳴り散らす。
「…はい、船長さん」
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