02
「くいなが死んだ…?」
緑頭の少年は信じられない表情で目の前の男性を見上げていた。
「くいなの剣!おれにくれよ!」
意を決したように立ち上がる少年はまっすぐに男性をにらむと自身の決意を大声で言いはなった。
「おれはあいつのぶんも強くなるから!天国までおれの名前が届くように、世界一強い、大剣豪になるからさ!!」
見たこともない少女が涙を流しながら笑う。どこかで見たことがあるような顔。
「いいね、ゾロは男の子だから…」
この人がくいな?
あれ…
どこで見たんだっけ…
たしか、最近…
「剣士として"最強"を目指すと決めた時から命なんてとうに捨ててる。このおれをバカと呼んでいいのはそれを決めたおれだけだ!!」
次に視界に写ったのは黒い刀を手にした男の前に立ちふさがるゾロの姿。
「背中の傷は剣士の恥だ。」
「見事!」
次の瞬間、視界は赤に包まれた。
そんな中、声だけが聞こえる。
「不安にさせたかよ…、おれが…世界一の…剣豪にくらいならねェと…お前が困るんだよな……!!」
誰に言ってんのさ…
「おれはもう!二度と敗けねェから!!あいつに勝って大剣豪になる日まで…絶対にもうおれは敗けねェ!!文句あるか、海賊王!」
…海賊、王?
「おい!!」
『………どうしたの』
「どうしたじゃねぇだろ!!」
気づけば目の前にはゾロの顔があり、両頬を彼の大きなごつごつした手で包まれていた。さっきまでのゾロと違い傷もなく、血も流れていないようだ。
「おまえが動かねぇからこっちは心配し…」
『ごめん…、もう大丈夫』
「…おい!」
ふらふらと歩き出すハルに手を伸ばすも軽く払われてしまう。しかし彼女の足取りは依然として危なげだった。
「しっかりしろよ!」
『…くい…な…っ…、あの海兵だ』
「おい!」
ふらりと倒れ込むハルを慌てて支えるゾロ。何度か彼女の名前を呼びながら揺すぶるが、どうやら意識を失ってしまったようだ。
「おーい、みんなのとこに…ってハルどうしたんだ?」
「…こっちが聞きてぇよ」
彼女をそっと背負うと立ち上がり、チョッパーを乗せた板を引っ張る。ルフィのもとまで砂を登ると、一度背中に乗る少女を上げた。
「チョッパー、どっちだ」
「うっ…香水のにおい……あっちだ」
鼻を抑えるチョッパーが指した方角へ二人は歩き始める。
「おい、ルフィ…」
「あ?どうした?」
前を歩くルフィに声をかけるゾロは彼を見ることなくただまっすぐ前を見つめている。
「おまえ、ここへ来てスモーカーに会ったか?」
「スモーカー?けむりんか?会ったぞ!それがどうした?」
「………そうか」
ゾロは何かを考えるかのようにうつむき軽く目を伏せると、再び前を見て歩き始めた。
それっきり二人の間に会話はなかった。
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