02
―――ザッ
『……。』
町から離れた岬に位置するふざけた外観の家。強い風に巻き上がる砂埃。目を細めて前を見やれば、見たくなかった光景に目を見開いた。
瞬時に駆け出すハルの足は、一直線に倒れこむ人影の元へと向かう。
『ウソップ!!ウソ…プ……?』
地面を濡らすほど、ぼろぼろと流れ出る涙。
それに気がついたハルは、何も言わずに着ていたパーカーの袖口で、彼の涙を拭う。
見れば顔はもちろん、身体もぼろぼろで、ひどく蹴られた後などが色濃く残っていた。
ぎりっと唇を噛みしめると、着ていたパーカーを彼の身体へとかける。
『…待ってて。』
立ち上がった彼女の瞳は、見たことがないほどに冷たく光っていた。
―――ドゴォオ…
巨大な扉を蹴り飛ばす。ざわつく内部には、何十人もの人間がいるようだが、彼女は全く怯むことはない。
「何だ!?てめぇ!!」
男の叫び声に応えることなく顔を上げた彼女の瞳に、ぞくっと背筋を凍らせる。
「な、なんだ…っ」
「こいつ…、舞姫だ!!」
手にした手配書と見比べ声をあげる者。
「さっきの長鼻の仇討ちってことかァ!?」
「1億3千万ベリーが自分からのこのことやってきやがったぜェ!!」
ゲラゲラと笑う男たちに構わず、ハルの身体は淡く光を放つ。
「何の能力なんだ?」
「知ったこっちゃねえ!!やれぇーっ!!!」
ワッと飛びかかるフランキー一家。その手には刃物やバズーカなど、様々な武器が所持されていた。
『……。』
空色の瞳が鈍く光ったのを、彼らが確認出来たのは一瞬だけだった。
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