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「おはよう、ハル」
『リナリー、おはよう』
朝からふわりと微笑むハルを見ると心が温まる。きっとそう感じるのは私だけじゃない。彼女が黒の教団(ここ)に来てから科学班のみんなが穏やかに見えるのは気のせいじゃないだろう。
『あ…あのね、リナリー』
少し言いづらそうにうつむく彼女は、若干頬が染まって見える。熱でもあるのかしら、って心配になったけどそうじゃないみたい。
『わ、わたし仕事に区切りが…もう少しかかるけど……つきそうなの!だから…わたしと朝、あ…朝ごはんを…』
「ふふ…一緒に食べましょ?」
『ほんとう!?』
見てとれるぐらいあからさまに輝く表情に思わず笑っちゃう。あんまり嬉しそうにしてくれるんだもの。
『すぐ…!いそいで終わらせるねっ!』
資料を抱えてパタパタと兄さんの部屋、室長室に入っていくハルを見送って、私は彼女のデスクの周りを見渡す。
他の科学班よりは整ってるように見えるけど、やっぱり科学班らしく荒れたデスク。紙にはいっぱいに何かの式が書き留めてある。
「ハルー!!」
「…朝から元気ね」
声高らかに入ってきたのはラビで、私を見つけてにこにこしながら寄ってくる。
「ハルは?」
「今は兄さんのところよ。何か用かしら?」
「朝飯に誘いに来たんさ!」
嬉しそうに話すラビはこうやってあからさまにハルに好意を向けている。誰が見てもわかるのに、どうして本人は気づかないのかしら。
「ふふ…残念ながらあの子には先客がいるわよ?」
なんて少しいじわるをしただけなのに、ラビはいっきにしょぼんと沈んじゃった。耳があったら確実に垂れてるわ。
「…リナリーも断られたんか?」
「私は…」
『リナリーおまたせ…ってラビ?』
「ハル!!」
さっきまでの消沈っぷりが嘘みたい。ハルを見た瞬間いっきに表情が明るくなった。
『お、おはようございます!どうしたんですか?』
「ハルを朝飯に誘おうと思ったけど、先客がいるんだってな。」
『え…あ、はい。けどあの、ら…らびも一緒に』
「いいんか!?」
パアッと輝く表情にハルは恥ずかしそうに小さくうなずいた後、ハッとして私を見上げた。
『ご、ごめんなさい!勝手に…でもみんな一緒のほうが楽しいかなって…』
「大丈夫よ。私もそう思うわ」
にこりと微笑みながら彼女の頭をぽんっと撫でると、ホッとしたあとふわりと表情を緩めた。