「…お帰り、僕のペット」


その部屋は暗く中にはぽつんと影がひとつ立っていた。

『ペットって…、相変わらず酷いよね。』



手を広げ待つ彼のもとへゆっくりと近づく。


「酷い?僕、君には優しい方だと思うんだけどな。」


ぎゅっと抱きしめる彼にされるがままのなつめ。



『他の子達が不憫でたまらないよ。』

「何言ってるの?あいつらはただの化け物の集まりだろ?」


されるがままだったなつめがそっと慊人を押し返す。



『あたしだって…慊人に言わせれば物の怪つきの化け物だ。』

その蒼色の瞳は冷たく慊人を見つめた。


「なつめも化け物だね…だけど僕はそんな君も愛してあげる。」

『いらないよ…そんな愛 』


再び抱きしめようとした慊人の腕をすっと抜けると閉めきってあった襖を勢いよく開ける。遮られていた日の光が彼の青白い肌を照らした。





「なつめさ…学校行きなよ」

『え?』

「せっかく帰ってきたんだ…手配ならしとくからさ。」
にっこりと笑う慊人をじっと見つめるなつめ。


『…………』

「…………」







はぁっとため息をついたのはなつめでその表情は少しだけ呆れを含んだ笑顔だった。



『いいよ』

「なつめならそう言ってくれると思ったよ。」





だって君は







    僕の玩具だから。




「早速来週から行きなよ。住むところは紫呉のうちだよ。」

『…しーちゃんの?』


じっと考えるなつめに慊人はくすりと笑うと、そっと近づき耳元でささやく。


「…おもしろいことになりそうだね。」

『………』

なつめは何も言わず窓の外を見つめていた。





















―――海原高校



「つーわけで転校生来たから。」

突然の担任の告白に教室中がざわざわと騒ぎだす。


「繭ちゃーん、女子?男子?」

「自分の目で確かめてみろ〜、じゃ入れ」

担任の声にガラッと開いた扉から光る銀色の髪に蒼色の瞳を持った可愛らしい女子が入ってきた。



「うわっ…すげー可愛い///」

「あの子可愛いー!!」

「これヤバくない?//」

男女問わずざわざわと騒ぐ中、ガタッと勢いよく立ち上がる二人がいた。



「なんで…なつめが!?」

「おまっ…!…え、な…?」

二人を不思議そうに見るクラスメイトを放って自己紹介を始める転校生。


『草摩なつめです!よろしく!』



ふわりと微笑むなつめを見て多くの男子がにまぁっと口角をゆるめた。


「草摩って由希くんや夾くんと同じ?」

「え、あの子も?」

「んじゃ草摩の席は…っとそこな」


クラスメイトが噂するなか担任は飄々と話を進める。途中入学だったため席は一番後ろで窓側だった。



なつめが席につくと目の前に見えるのは綺麗な金色の髪。窓から照らされる光に輝くそれになつめは思わず声をあげる。


『うわー、綺麗な髪!あたしなつめっ、よろしく!』

その女子はふりかえるとなつめの頭から爪先までなめるように見た。



「あんた…かっわいいね〜」

『え…ありがと///』


突然のことに素直に照れるなつめを見て前の席の女子、魚谷ありさは気に入ったと声をあげたのだった。








回り始めた歯車








 


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