男女の友情は成立するか否か。今日の議題はこれだ。
ベッドに寝転がりながら頭だけ起こして頬杖をついていた青峰は、なんだそれと呆れた風なため息をついた。厚手の服越しでもわかる、しっかりとした体だ。ベッドさんはこんな巨体が乗ってるのによく耐えれるもんだ。


「お前いっつもそんなこと考えてんの」
「そうだよって言ったらどうする?」
「俺のこと好きなのかキモいなって言う」
「青峰って一回死んだほうが良いと思うんだけど、どう?」
「死ぬかバーカ」


ついこないだまでは何を話しても興味を示さなかったのに、今は呆れながらもあたしの相手をしてくれる。
ウィンターカップを経て部活に顔を出し始めたと、さつきちゃんが嬉しそうに語っていたことを思い出した。よかったねさつきちゃん。ちなみに今日はサボったわけじゃなく、滅多とないオフの日らしい。

青峰とあたしの関係を言うなら、悪友。その一言に尽きる。それ以上もそれ以下でもない。と思う。
帝光時代、二年の半ばで擦れ始めたキセキの世代だけど、それはこいつも例外ではなかった。昔はもっときらきらしてたのになあ。
部屋の真ん中にある机に頬を押し付ければ、ひんやりと冷たさが伝わった。


「おい」
「ん」
「暇」
「知るか。ていうか呼んだの青峰なんだからなんかあんのかと思って来たのになにもないってどういうことなの」
「男の家になんの警戒心もなく来るとかお前頭大丈夫かよ」
「・・・・何言ってんの?」


青峰でしょ、と肩を竦める。青峰は上体を起こして、首の後ろに手をやりあくびをした。
そしてそのままベッドから立ち上がって、あたしの背後に立つ。座ったまま顔を上げれば、何も考えてなさそうな瞳と目が合った。
それがそのまま近づいてくるもんだから、思わず目を瞑る。・・・あれ、なにしてんだ青峰。


「もっと危機感持てっつの。手ぇ出しにくいだろーが」
「は・・・はあ?え?」


唇に触れた柔らかいものがなんなのか、理解するのにそう時間はかからなかった。
頬に集まった熱。伸びてくる手から逃れようと立ち上がってみるけど、腰に回った腕に「あ、終わった」とどこか冷静な頭。
どうやら悪友と思ってたのはあたしだけらしい。


「男女の友情は成立するか、だったっけ?」
「するよね、するはず、しますよね」
「するわけねぇだろ」
「ちょ、あおみねはなして、ひっ!?」


強い力で腰を引かれて青峰の股の間に座り込んでしまったあたしの首筋に、生暖かい何がが這う。それはそのまま耳元まで到達して、羞恥で気が狂いそうだ。
いつの間にかがっちりホールドされてるし、もうほんとになんだこれ。なんだこれ。なんだこれ!


「俺のこと嫌いじゃねぇだろ」
「ちょっと待ってどっから来るのその自信っ、ぎゃっ」
「もっと色気ある声出せよ」


大きな手の感触が、直接お腹に触れた。
っこの、エロ峰があ!


「つめ、つめたいってば!」
「知らね」
「知らねって、ちょっと離して!」
「イエスって言ったら離してやってもいいぜ」
「は?何が?何のこと?」


後ろから抱きしめられているため、青峰の顔は見えない。けど、たぶん、余裕そうな表情をしているんだろうなと思った。くそ、腹立つな。
耳元で、低い声に名前を呼ばれる。不覚にも高鳴った心臓が恨めしい。


「俺のもんになれ」


返事も聞かずに上を向かされて唇に噛み付いてきた青峰の表情が、予想に反して余裕なさげだったから、仕方なくだけど頷いてあげるとしよう。
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