まぁなんともにぎやかな人たちが店に入ってきたなぁと思っていれば、それは現クラスメイトの七瀬と橘、それからその後輩三人と、・・・んん?


「・・・まつおか?」


昔より何倍もとげとげした雰囲気の、赤髪の人。
まだ小学六年生の頃、転校してきたのも確かこれくらいの時期だったはず。なんとまぁ中途半端すぎる時期に転校してきたものだなと遠巻きに眺めていれば、彼はそのルックスと持ち前のコミュ力でなんなくクラスに溶け込んでみせた。
他人にあまり興味を示さない七瀬も、何故か松岡のことを敵対視というか・・・してたよなぁ、なんて物思いにふける。
ああいかん、今はバイト中だった。思わず止めてしまっていた手を再開させようとした時、コールがかかる。
・・・う、七瀬たちの席じゃん、あんまり知り合いのいるところに顔を出したくないのだけど・・・と、料理長を振り返るってみるも、「どうしたの?お呼びだよ?」と柔らかい笑顔が返ってきた。ま、眩しい。
渋々メモを持って指定の席へ向かう。

真っ先に私に気付いたのは、橘だった。


「あ、久遠ちゃん」
「えっどこどこ!?わっ、ほんとだ久遠ちゃんだ〜!」


白々しいにも程がある。


「橘も葉月くんも嘘つくの下手くそだな。私がここでバイトしてるって知ってて来たでしょ」
「あは、バレてた?」


かわいらしくウィンクをする葉月くん。悔しいが様になってる。
くいっと眼鏡を押し上げた竜ヶ崎くんが、「早くメニューを言わないと、先輩が困ってますよ」とフォローを入れてくれた。いい子だ。葉月くんも彼の垢を煎じて飲めばいいのに。

チラリと松岡らしき人を見てみる。ケータイをいじっているせいで伏せられた頭のせいで、あまりよく顔が見えない。・・・ううん、間違ってないはずなんだけどなぁ、だってほら、赤い髪の人ってそうそういないよ?
・・・気になる。松岡なら松岡で、もっと私に反応してくれたっていいものを!
覚えてなかったんならしょうがないけど、それなりに仲良くしてたからなぁ、それはちょっと寂しいなぁ。


「鯖の塩焼き定食」
「揺ぎないね七瀬」
「じゃあ僕はハンバーグ定食!」
「あ、僕もそれでお願いします」
「あ、久遠先輩私もそれで!」
「一年生ズはハンバーグ定食っと・・・」
「じゃあ俺はマカロニパスタで」
「はいよ。・・・・あの、そちらの方は?」


いつまで経ってもケータイから顔を上げない人に恐る恐る声を掛けてみる。
すると、不機嫌そうな相貌がこっちを向いた。・・・これ、松岡じゃないのか?違うのか?
だってあれだよね、松岡ってもっとこう・・・愛想よかったもんね。

勝手に頭の中で松岡じゃないと決定付けて、その人の返答を待つ。


「・・・牛すじステーキ」
「ちょっとお兄ちゃん!なんでそんなふくれっ面なの?」


牛すじステーキひとつ、とメモを取りかけたところで、江ちゃんの言葉に動きを止める。
「べつに」と壁の方を向いてしまったその人は、やっぱり、


「松岡じゃん!なんで他人のふりなんかすんのさ。あ、もしかして私のこと忘れてる?小学校の時同じクラスだった、」
「楸」
「そうそう楸久遠・・・って覚えてんのかい!え?江ちゃんこれほんと松岡?いつの間にこんなひねくれてんの?」
「いや、あはは・・・」


苦笑する江ちゃん。なんだか聞いてはいけないっぽかったから、その話題は置いといて。
「久遠ちゃん、この特大パフェも最後のほうでお願いね!」と元気よく言った葉月くんにわかったと頷いて厨房へ向かった。

人って変わるもんだなぁ。そんなことを思いながら。

>>>
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -