「ぶっちゃけさ、涼太より真太郎のほうがイケメンだと思うんだけど」


ある日の昼下がり。
気持ちの良い木漏れ日が良い具合に机に降り注ぐ、そんな平和な時間。久遠の口から爆弾が投下され、それに乗じて緑間は口に含んでいたお茶を吹き出しそうになった。
めんどくさいからと席を動きたがらない久遠と、隣の席の緑間と、そして何かとちょっかいをかけてくる高尾は毎日一緒に弁当を食べている。
ごほごほとむせ始めた緑間を不思議そうに見つめる久遠に、堪えきれなくなった高尾は腹を抱えた。
よく笑う奴だ。久遠は緑間の弁当の中に入っていたタコさんウィンナーをつまんで食べる。タコさんウィンナーて、と内心笑ったことは秘密だ。


「ぶっは、はー・・・!いつものことだけどさ、久遠って変な事言うよな」
「ただ純粋に思ったことを変と言われるあたしの身にもなってくれる?」
「涼太って黄瀬クンの事っしょ?」
「そうだけど」
「アレより真ちゃんがイケメンねぇ・・・クク・・・!」


じろじろと下から覗き込むように見てくる高尾に、「見るな」と手のひらで押し返した緑間は耳を赤くさせたまま眼鏡のブリッジを押し上げた。照れ隠しだ。


「ってーなぁ・・・真ちゃん容赦なさすぎ!」
「お前がじろじろ見てくるからだろう。失礼なのだよ」
「イケメンって言われてどうっすか、今の心境は?」
「うるさい黙れ」
「うひゃ、超理不尽〜!」


お返しにと卵焼きを奪っていった緑間の綺麗な手をぼーっと見つめながら、久遠は頬杖をつく。


「いやでもさ、これはまじで思う。真太郎イケメン。涼太から愛嬌の半分でももらってきてればモテるの間違いなしだよ」


本気と書いてマジね、と人差し指で空中に文字を書く久遠に、緑間はため息をついた。
至極真面目な顔で語る彼女に、高尾はまた吹き出した。


「っつーかアレだよな、黄瀬クンや真ちゃんのこと名前で呼び捨てしてるってことはそれなりに仲良かったんだ?」
「まぁマネージャーだったし」
「っはぁ!?なんで高校入ってマネやんねーの!?」
「高尾声でかい。別にそんなことどうでもいじゃん」
「よくねーよくねー!オレ今度部長に掛け合ってみよ」
「余計なことしないでよ、マジで。もうマネージャーはやんないって決めてるの」
「なんでさ」
「めんどくさいから」
「言うと思ったよ」
「それより問題は真太郎が涼太よりイケメンか否かについて、」
「その話はもういいのだよ!」
「あっひゃっひゃ!真ちゃんクリスマスカラーになってんぞ!季節はずれ!っいで!?」
「高尾も懲りないね」
「だっておもしれーしー。いてて・・・まじで真ちゃん容赦ねぇ」
「その口を縫ってやりたいくらいなのだよ」


す、と弁当を緑間の前に押しやって、久遠は腕を組んだ。残りは二人でわけろとのこと。
毎回こうして少量しか食べない久遠はただいま絶賛ダイエット中だ。
彼女の弁当から冷凍食品のハンバーグをつまみながら、高尾が言う。


「でもそれ言ったらさ、オレは桐皇の桃井?サンだっけ?その人より久遠のが可愛いと思うぜ?」
「・・・それは付き合ってきた歳月が違うからそう思うだけだよ」
「あっれー久遠チャン顔が赤い気がすっぐは!?」
「・・・・・・久遠、少しは手加減してやれ」
「高尾はもう沈んどけばいいと思う」
「それに関しては同感だが」
「二人ともひっでー!」


また笑い始めた高尾に、今度は二人でため息をつく。
時計を見上げれば、もうそろそろ休憩の終わりを告げる鐘が鳴る時間だ。
話し込んでいたためかわずかに残っている白飯を無理矢理緑間と高尾の口に突っ込み、弁当をしまう。
いきなりのことに対応できなかった二人は驚いた表情でふごふごと何か言いたげな顔をしていた。


「結論、真太郎は涼太よりイケメン。ついでに高尾はうざい。各自覚えて帰るように。ついでに高尾はうざい」


今日も平和である。

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