寒いね、と白い息を吐きながら言うと、柔らかな眼差しを向けながら真琴は笑って頷いた。
真琴のカバンは、みんなからもらった誕生日プレゼントでぱんぱんにふくれあがっている。

まるで、サンタさんみたい。

真琴は優しくて、聡い人だ。
だから、私がプレゼントを隠し持ってることもバレてるに違いない。けど、敢えて言わないでいてくれてるに違いない。

私は弱くて、臆病な奴だ。
そして、すごくわがままな人間。
真琴の特別な、大切な日に、他の人と同じようにただ渡すだけじゃ嫌だなんて思ってしまう。
でも馬鹿だから、どうやって渡せばいいのかなんてわからない。
一歩が踏み出せない、毎年こうだ。

幼馴染みの壁を、超えられない。


「久遠」


ふいに名前を呼ばれて、慌てて顔をあげた。
考え事があるとすぐに周りが見えなくなってしまうのは、昔からの私の悪い癖だ。

なに?と言う代わりに首を傾げる。
カバンの中に隠しているプレゼントの包装が、こすれる音がした。


「あのさ、俺」
「うん」
「ずっと怖かったんだけど、」
「うん?」
「厚手がましいお願い、言ってもいい?」
「え?」
「プレゼント、ねだる形になっちゃうけど」
「え、」


もしかして、真琴、欲しいものがあったの?
カバンの中に入れてあるプレゼントじゃ、ダメってことなのかな。
ドキドキと、変にうるさい心臓。
もう、それなら買う前に言ってほしかったな。
少しでも真琴の特別に近づけるように、何時間も悩んで選んだものだから。

でも、珍しい申し出を断るわけにもいかない。
なにより今日は、彼の誕生日なんだから。


「いいよ」
「ほんと?」
「うん。珍しい真琴のわがまま、叶えれる範囲で叶えてあげ、」


言い切る前に真琴の手が伸びてきて。
一気に引き寄せられた私の背中に回るたくましい腕に、一瞬何が起こったのかわからなかった。
ただ、感じるのは、どくどくと早く脈打つ真琴の心臓の音と、温かな体温。


「ま、まこと・・・?」


戸惑う私の声も、震えている。

私の肩に額を押し当てた真琴は、「ほんとはね」と言いながら笑っているようだった。


「小さい頃から、久遠が欲しかったんだ。他にはなにもいらないくらい」


ずっと、ずっと。
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