「ねねね久遠ちゃん!今日はなんの日か知ってる?」


目をキラキラさせて、葉月くんが言う。
両手に例のブツ。何を目論んでいるのかバレバレである。
あたしはさっと口元を手で覆って、「ポッキーゲームなんてしないからね」葉月くんは目に見えてがっかりした。


「なんでそんなもったいないこと言うの久遠ちゃん!今日この日をきっかけに僕にファーストキッスをくれたっていいじゃん!」
「やだよそんなムードも欠片もないき、キス、なんて!」
「キスって言うのに抵抗しちゃう久遠ちゃんも可愛いけどさー」
「うるさい!可愛くないわ!!」
「照れないで、ね?」


付き合い始めて何ヶ月か経った。
お互い恋人が出来たのは初めてだけど、なんでも挑戦したがる葉月くんに最初から振り回されっぱなしである。
手も繋いだ。ハグだってした。でも、そういう雰囲気になったとき、いつも恥ずかしさが勝って拒んでしまう私に彼は結構我慢してくれているのだろう。

それは分かっている、んだけども・・・
やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。

電気カーペットのついた私の部屋の中で、唇を尖らせた葉月くんがごろごろと転がる。
ふわふわの髪の毛が膝に当たって、少しくすぐったい。
思わず手を伸ばして彼の髪の毛を触れば、見上げてきたその瞳と目が合う。
無意識に、笑みがこぼれた。


「・・・そうやってさぁ・・・」
「え?」
「もーだめ!僕ほんとこれでも我慢できてたほうだと思うよ?」
「んん?」
「僕は悪くないからね!そんな顔する久遠ちゃんが悪い!」
「ちょっと葉月くっ・・・ん!?」


葉月くんの匂いに包まれたと思ったら、視界が真っ暗になった。
ふわりと唇に触れた、何か。

それがなんなのか、理解した瞬間に暴れだす心臓。
平均より華奢な彼の体を押しても、びくともしない。
離れては触れ、離れては触れ、幾度となく繰り返される行為に羞恥心が限界に達していた。


「・・・・・・・っは、・・・!」
「・・・へへ、ごめんね?」
「ご、ご、ごめんねじゃ、な・・・い!」


恥ずかしすぎて死にそうだ。
きっと真っ赤になってるであろう頬を押さえながら、見られないように葉月くんの胸に顔を押し当てる。

安心する、彼の香り。
私と同じように騒がしい、葉月くんの心臓。


「久遠ちゃん、好きだよ?」


たまらなくなって、今度は私から口付けた。
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