目が覚めた。
暖かい布団の中。背中と腰には大きなたくましい手が回されていて、足も挟まれている。
動こうにも動けない。見上げると、怖いくらいに整った顔ですぅすぅと寝息を立てる凛のお顔。
凛はいびきをかかない。初めて一緒に寝た時から今まで、いびきを聞いたことがない。寝てるときまで完璧にならなくていいのに。
体勢を変えることもできない状況で、二度寝するにも目が冴えてしまった。さて、どうしようか。

なんの夢を見ているのか、凛が声をこぼした。かすれている。可愛い。
もぞもぞ、手を動かして凛の頬を軽くつまんでみる。ん、と小さなうめき声を上げたけど、起きない。
朝に強い凛でも、こんな時間にはさすがに起きないか。今の体勢でちょうど見える位置にある時計は、まだ三時半になったばかりだ。


「りーん」
「・・・・・・・・・・・・」
「りん」
「・・・・・・・・・・・・」


起きない、かぁ。
やい、バカ凛。君のせいで私、寝返り打てないんだぞ。
もう一度手を伸ばして今度は鼻をつまもうとすれば、それより早く凛が動いた。うわ、うそでしょ。

さっきよりもきつく抱きしめられる。凛っていっつもこんなに私のこと抱きしめてるの、よく窒息しないな、私ってタフ。
悪い夢も見たことないし、・・・て、むしろ凛が居ない時のほうが怖い夢見てるよね、・・・なにこれ凛パワーやば。

でもさすがにこれはきつい。


「凛、凛」
「・・・・・・・・・・・」
「ちょ、っと・・・!」


寝てるのになんでこんなに力強いの!
肩を押すけど、びくともしない。
もぞもぞと体を動かせば動かすほど、それを拒むように凛は私を抱きしめる力を強めていってる気がする。危うい、夢じゃなくてほんとに窒息する!


「凛!」
「、ん・・・?」


うっすらと目を開けた凛は、普段とは違って無防備だ。
それが面白くて少し笑ってしまえば、覚醒していない頭でも笑われたことは分かったのか「・・・んだよ・・・」と小さく呟いた。

たくましい腕が私の背中から離れて、近くに置いてある時計を掴む。あ、解放されたけどなんとなく寒いかも、


「・・・・・まだこんな時間じゃねぇか・・・寝るぞ、」
「うわっ」


時計を放って、凛は再び私の背中に腕を回して引き寄せた。
もともとなかった距離が、さらになくなる。くそう、体勢整えとけばよかった、


「・・・久遠、」
「ん?ん、」


突然重ねられた唇。
びっくりして何も言えずにいると、唇から離れていったそれは今度は額に触れた。
少し、くすぐったい。
そして、温かくて、なんとも言えない気持ち。幸せ、ってことなのかな、これは。

見上げれば、今にも寝そうな、そんなとろけた顔をした凛が優しく笑みを浮かべていた。
くそ、かっこいな。


「おやすみ」
「・・・うん、おやすみ」


悔しいから、私だって、
力いっぱい抱きしめた。
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