「・・・緑間?」


思わずいつものあだ名で呼べなかったのは、彼の纏う空気のせいだ。
どうして私の家の場所を知っているかは別として(どうせ征くんあたりが知ってたに違いない)、「話がある」と言った緑間を中に入れる。
ここでいいのだよ、と緑間は荷物を肩から降ろすこともせずにじっと私の目を見た。

な、なんだろう、コレ。
いつも目が合うなんてこと、滅多とないのに・・・
思わず私から目を逸らして、緑間の綺麗な指を見てしまった。いつもテーピングが施されている彼の指は、何事に対しても手を抜かない緑間の根性というか意地というか、私には到底こなすことのできない努力の量が垣間見える。


「久遠は、青峰が好きか」
「え」


突然の質問にすぐ答えることができるはずもなく、私は思わず顔を上げて緑間の顔を凝視してしまった。なんでそれを。何故バレた。どこから?え?

・・・いや、バレたとか、そういうのではないはずだ。
仲良くなってから、話さない日はなかったから、緑間にも分かってしまったのかもしれない。
だから、私にも分かった。

ねぇ緑間。
ポーカーフェイスを装ったって、仲良くなってそんなに日も経ってない私にだって、分かるんだよ。


「・・・・・・・・・うん」
「・・・・・そうか」


でも、そんな瞳にさせてしまっているのは、他でもない私なのだ。
自惚れでもなんでもいい。何を言われたって構わない。
それでも私は、私の心に嘘はつけない。

今までの私と緑間を思い出す。
緑間はいつだって他人にも自分にも厳しくて、でも優しくて、俗に言うツンデレで、どんな些細な変化にも気づいてみせた。

私は緑間が好きだ。
でも、きっと、緑間が私のことを思う"好き"とは、相容れない"好き"だ。


「では、その気持ちはもう伝えてあるのか」
「ま、まだ・・・」
「オレが口を挟むことではないかもしれないが・・・何も心配することはないのだよ。少し勇気を持てれば、大事無い」
「緑間!」
「なんだ」
「ありがとう、がんばる」
「・・・ああ」


何も、言葉は要らないと思う。
私が青峰の事を好きだと気づけた時の、あのなんともいえない愛しい気持ちを、緑間や・・・子テツは、私に感じていてくれたのだ。
だからといって、それに応えられない事に申し訳なさを感じる必要なんてない。

私は、私の事を好きでいてくれた彼らに、恥じない人でありたい。


「用はそれだけなのだよ。遅くにすまなかったな」
「そこまで送ってくよ」
「いや、いい。・・・もうすぐ新学期が始まるが、クラスが変わっても、その・・・よろしく頼む」
「当たり前じゃん!」
「・・・じゃあな」
「・・・ばいばい」


ありがとう。

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