「あ、久遠ちんだ〜」


紫原の言葉に一同が同じ方向を見た。
通いつめているコンビニの店内に、見知った後姿。誰が声を掛けずとも、自然と足は皆そこに向かう。暗黙の了解、とでも言うのだろうか?
少し意味は違ってくるかもしれないが、久遠は部活後のオレ達の足をわざわざ動かせるくらいに大きな存在なのだ。
春休みに入ってから少しメールが来たくらいで会うことはなかったからか、その姿はずいぶんと久々に感じる。

黄瀬や紫原の後に続いて店に入ろうとした時、ふと違和感を感じた。


「行かないんですか、青峰君」
「あー・・・今日はちょっと用事があるかも」
「かもって・・・」


渋い顔で店内を見つめながら頭をかく青峰。おかしい。
オレは同じクラスだから分かる。
青峰はオレと同じく不器用ではあるが、オレよりも数倍素直な性格をしているのだ。
久遠を見つけたなら、黄瀬や紫原のように駆け出すとまではいかずとも、必ず絡みに行くはずなのに。

後ろから飛びついた紫原と黄瀬に、潰れそうになりながらはっとした様子で辺りを見渡す久遠。

・・・ああ、そういうことなのか。

少なくとも、自分の気持ちを自覚してからは視界に入れてきたから分かる。分かってしまった。
オレはとうとう、気持ちを伝えれなかったというわけだ。
完全に、出遅れたのだよ。

黒子も気づいたのか、表情が変わらなかったが何かを決めたような瞳をしていた。


「行かないのか?珍しいなお前達」
「・・・赤司・・・」


なにもかもを分かっているような表情で腕を組んだ赤司は、「オレは先に行っているぞ」と言い残して店内に消えた。


「行かないんですか?青峰君」
「・・・・・」
「この、意気地なしが」
「・・・あ?」


その場から動こうとしない青峰に大股で近づき、その胸倉を掴みあげる。
なにをしている。あいつは少なくとも、今視線でお前を探したのだ。
何があったかは知らないが、それは、そういうことなのだろう。

勇気を出せずに何もできなかったオレとは違うお前が、こんなところで止まっていてどうするのだ。


「何があったのかは知らん。だが、オレの知るお前は今目の前に居る小心者ではないのだよ」
「・・・・・」


店内に視線を送れば、久遠と目が合った。
はたから見ればただの喧嘩の体制に、驚いたような顔をしている。
眼鏡を押し上げ、青峰の服を手放した。


「あ、青峰!」
「!・・・」


ほら、久遠はお前の名を呼んだ。
傍にいるオレでも、黒子でもなく、青峰の名を。


「話がある!!」
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