行き着く先は、最近離れ離れになったばかりの彼の連絡先だった。
少し切なくて漫画にあるみたいな別れ方をしたというのに、すぐに泣きついてしまうなんて情けない・・・でも、やっぱり、一人では抱えきれないのだ。

ベッドに放ってある大きなクッションを引き寄せて、顎を乗せる。
コール音の向こうで、造ちゃんは何をしているのだろうか。高校でもバスケを続けているのだろうか。
なんにでも熱心に取り組む姿を思い出して、早くも懐かしくて会いたくなった。


《・・・もしもし?》


ぞ、ぞ、


「造ちゃんだあ・・・!!」
《・・・あのな、そりゃオレのケータイにかけてんだからオレが出るに決まってんだろ。で、なんかあったのかよ》
「もう造ちゃん大好きいいいいいい」
《うるせーよ泣くな鼻かめ》
「ん」


机まで歩いて行って、ティッシュを取り出して鼻をかんだ。スマホを耳にあてたままだったから鼻をかむ音は向こうに丸聞こえだけど、造ちゃんは汚ねぇなと苦笑した様子だ。呆れた風に笑う様子が思い浮かぶ。会ってないのにお互いのことが分かってしまうくらいには、長い時を一緒に居たのだ。

そのまま勉強用に椅子に座って、私はさっそく話を切り出した。


「今まで友達だと思ってた人から、その・・・アプローチされてというか」
《ああ、キスとか?》
「ぶっ!」
《ドンピシャかよお前ガード緩ぃのな。んで?誰だ?青峰か?》
「へあっ!!」
《最初から素直に青峰にキスされたんだけどどうしようって言っとけばいんだよ馬鹿》
「いっ、いっ、言えるわけないじゃん!馬鹿!」
《切るぞ》
「ええええ待って待ってまだ話し始めたばっか!」
《あのなぁ・・・》


オレもそんな暇じゃねーんだけど?と言いながらも切る気配はない造ちゃんに安心する。
離れていてもやっぱり造ちゃんは造ちゃんだ。

いつもと違う、真剣かつ切なそうな顔つきの青峰を思い出して少し頬に熱が集まった。


《・・・お前さぁ》
「う、うん」
《男のオレにんな相談して、何か解決するとでも思ってんの?》
「だってちなにはもう前に相談しちゃったし・・・」
《ちな?ああ、お前のダチの》
「うん」


鏡を見た。
青峰に誤ってアシメにされた前髪もとっくに伸びて、ついでに後ろ髪も伸びて、ポニーテールは簡単にできるような長さになった。
・・・だめだ。考えることすべてを青峰に絡めてしまう。なんだこれ本当になんてことしてくれたんだ青峰のバーカ!!!


《嫌だったのかよ?》
「え?いや・・・」
《嫌じゃねーんなら、そーゆーコトだろ》


な?と笑みを含んだ声で言う造ちゃんがここに居たら、きっと頭をぐしゃぐしゃにされていたに違いない。
青峰も、よく、私の頭をぐしゃぐしゃに・・・また考えてしまってる。


「・・・どういうことだよ〜・・・!」


声は、遠いところにいる造ちゃんに届いたかは分からない。
ただ、《お前も進んでんだな》という造ちゃんの優しい声に、泣きそうになった。

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