春休みといえど、部活動は変わらず行われる。
むしろ学校がないせいでいつもよりメニューはハードだ。
バスケは好きだからがんばれるけど、さすがに疲れる。大きく伸びをして、ふとストリートバスケのコートに視線をやる。
見知った人影に、オレは疲れている体のことも忘れて駆け出した。

でも、彼女がコートにいるなんて珍しいな。


「久遠ちゃん!」


腕を振って全身全霊でオレの姿を認めさせる。
我ながら、心を許した相手に対してはベタベタだ。足も長いほうだからすぐに彼女のもとに到着した。


「やっほりょた君、何日ぶり?」
「春休み入る前からあんま会えてなかったから、けっこーっスよ!」
「じゃあ、久しぶりだ」
「てか久遠ちゃんがこんなとこにいるなんて珍しいスね」


そんなはずないなんて思いながらも、バスケしにきたの?と問えば彼女は首を横に振った。
曰く、帰宅部にとって長期休暇というのは暇な時間がただ増えるだけらしい。
部活用鞄を置いて、久遠ちゃんの隣に座った。彼女は女子の平均身長よりも少し小さいから、オレと並んだら本当に小さく見える。
紫っちとか、論外スよね。


「暇だからって、ここ来るんスか?なにもすることないのに」
「ここでよく造ちゃんの自主練するとこ見てたの」


なるほど。
暇なときに、もういない虹村先輩の面影を探してここに来るってことは、今久遠ちゃんはなにかしらの悩み事があるってことか。
そういえば、最近青峰っちも練習の仕方が、身が入ってねーわけじゃないけど、なんていうか、がむしゃらだ。
大きな背中を思い出して、オレはまっすぐ前を見つめる久遠ちゃんを盗み見た。


「青峰っちとなんかあったんスか?」


途端、顔を真っ赤にする久遠ちゃん。
オレってけっこー鋭いかも。っていうか、青峰っちとか、なにそれ面白そう!


「聞いてもいい?」
「駄目!りょた君きらい!」
「え!?ひどいっス!!」
「馬鹿!!」


赤い顔で取り乱す久遠ちゃんは、なんというか、可愛かった。
でもそうか、青峰っちか。二人は仲がいいから、密かにくっつかねーかななんて思ってたりしたのだ。緑間っちとかも、他の人には見せない顔を彼女には見せている気がするし、なんスか久遠ちゃん、モテモテじゃん。


「なにがあったかは知らねーけど、オレは久遠ちゃんも青峰っちも好きだから二人ともに幸せになってほしいっス!」
「・・・ほんとりょた君きらい」
「なんで!?」


大げさに悲しんでみせれば、久遠ちゃんは笑ってくれたから、よしとしよう。

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