"おはようございます、久遠さん"


いつもと変わらない彼に、私はとても悲しくなった。
変わらないんじゃない、ただ、僕は大丈夫ですからって、そう見せようとしてくれてるだけ。直接なんて聞けないけど、私だってそれくらいはわかる。

何故か事情を知ってた青峰氏に、あいつは大丈夫そうだったぜなんて言われたって、私の心が晴れることはなかった。
本当に大丈夫かどうかわかるのは、子テツだけだもの。いくら仲がよくたって、隠れている心まで読めるはずがない。


"おはよう!"


笑って返すことしかできない私は、なんて酷い女なんだろう・・・


「・・・ってゆー展開になるのかと思ってたよ?私はさあ!」
「すみませんそんな乙女チックな展開に持っていってあげられなくて」
「いや謝ることじゃないけどさ・・・、なんかこう、ね?」
「・・・じゃあ、今からでも少し哀愁漂う姿に変身しましょうか?」
「ごめんやっぱいい、無理、そんな子テツ見たくない」


子テツにお断りの返事をしてから二日。
ひょっこりと私たちのクラスに顔を出した彼に、私は飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。
昨日ザッキーにあんな、あんな萎えてる姿を晒しておきながら、子テツはいつもとなんら変わりない。変わりなさすぎて不思議なくらいに変わらない。


「昨日は先生につかまってしまって来られなかったんです」
「ああそう・・・うん、よかったよほんともう・・・」


昨日までの私はなんだったんだ。
恋ってもっと切なくて悲しいものだと思ってたよ。
ケータイをいじりながら、「いいじゃん無駄に気ぃ遣わないですむんだから」大人なちなは言う。まあそうだけどさ・・・いや、うん、もういいや。


「ってうかテツが休憩のたびにオレらのとこに来るの習慣化しちまってるよな」


笑いながら言った青峰氏に頷く。
毎度毎度よく懲りんものだ、なんてメガネを押し上げながら言った珍太郎に、子テツは「来てほしいくせに、もっと素直になってください緑間くん」「ありえん」「ぶふっ」今度こそジュースを吹き出してしまった。


「きったねぇなお前!」
「ふ、だって子テツと珍太郎のコントが・・・!」
「汚いです久遠さん」
「汚いのだよ久遠」
「アウチ味方が一人もいなーい」


まあ、とにかく一件落着ってことにしておこう。

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