放課後、隣でキツイ香水の匂いを放つ女の話を聞きながら、部活で賑わう校庭を眺める。
頭に浮かぶのは青春の二文字。オレとは程遠い、いや、程遠くなってしまった言葉。
暇さえあればせっせと腰を振る今のオレが、青春だなんて、そんな言葉を作ったやつに申し訳ねぇくらいにはすさんでいる生活だ。これでも一応自覚はある。
ただ、自覚があるのとそれを治そうとするのとは別問題だ。
オレは今の生活が満足とまではいかなくても、不満もない。


「で、それでねぇ、・・・」
「おー」


こいつも飽きてきたな。そろそろ別の女にありつくか。
なんて、我ながら最低なことを考えながら、ケータイに入っている女の名前を順に思い出してみる。

ふとまだ電気のついている教室の中を見てみると、見覚えのある女の姿が目に入った。
机にうつぶせてやがる。放り出した足の上履きは脱げていて、お世辞にも女子力というものは感じられない。


「・・・ワリ、ちょっと今日は」
「え〜?あ、じゃあまたメールするねっ」
「おー、待ってる」


待ってる、と言えばたいていの女は嬉しそうに笑う。
この女もその"たいていの女"に当てはまる奴だ。オレの急な行動に訝しむ様子もなく、上機嫌で玄関に向かっていった。

わざと乱暴に教室のドアを開けて、うつぶせたままのそいつの前の席から椅子を引っ張って座る。


「ようクソ女」
「・・・どうせクソですよ」


こないだと違う、弱弱しい声だ。
ゆるゆると顔を上げたクソ女、・・・楸は、ザッキーとオレのあだ名を呼んでまたうつぶせた。
なんだこいつ、気持ち悪ぃ。


「・・・気持ち悪いとはなによ、気持ち悪いとは、・・・」
「なにしょぼくれてんだよ気持ち悪ぃ」
「・・・・・・・恋愛上手なザッキーには程遠い悩みなのー・・・」
「フられたのか?っは」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」


黙り込んだこいつのつむじを人差し指でいじってみる。
「、やめろし・・・」相変わらず弱弱しい声で呟いた楸。

そんなに深く関わりはねぇ。
仲が良いかと聞かれればYESとは言い切れねぇ。

それでもこいつのこんな姿は少し、いやめちゃくちゃ違和感がある。


「むしろフられる側だったらよかったのに・・・・」


小さく、本当に小さくぼそりと呟かれた言葉は、一文字一句違うことなくオレの耳に入ってきた。

・・・ああ、そうだな、オレの恋愛とこいつの恋愛はまったくもって違う。
オレが慰めたって、なんの効果も得られない上に、言葉に現実味がねぇだろう。ましてや、アドバイスなんて。


「・・・気持ち悪ぃな」


だから、いつものお前に戻れよと言う代わりに、こんな言葉しか言えねぇけど。

ああ、なんだこれ。
もどかしいな、本当に気持ち悪ぃ。

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