あれは告白ではなかった。
そう結論した昼下がり、いつものようにうちのクラスに顔をだした子テツに、いつものように片手を挙げる。傍では驚いたような顔をした珍太郎とちな。いや平静装ってるけど私だってこれ以上不思議なことはないと思ってるからね。ほんとに。


「おい久遠」


意味がわからないのだが、と歩いてくる子テツを綺麗な指で差しながら珍太郎は言う。


「ちょっと久遠」


保留作戦もう実行してたの?ともうすぐ傍まできてる子テツを凝視しながらちなは言う。


「もうその問題には触れないことにした」


飴いりますか?と差し出してくれたそれを受け取りながら、私は諦めの混じった声音を発す。
そう、あれは夢だったんだよ。
あの空間すべてが幻覚「そんな馬鹿なことがあるか」じゃあなんだったんだあれは・・・

おうテツ!と彼に絡みだした青峰氏は何も知らないからそんな普通に接せれるんだよ馬鹿!くそう!このねぼすけめ!


「寝坊してきたお前が言う事ではないのだよ」
「なにアンタ寝坊したの?ベター」
「うっさいな!好きでそんなベタな展開になっちゃったわけじゃないよ!」


そっと子テツを盗み見る。ばっちり合ってしまった瞳に、慌てて逸らして気がついた。
なんだこれ漫画のワンシーンみたいじゃねぇかあああああ!?
私にもこんな青春できたんだ、じゃなく。

なにこの乙女な自分。キモい。


「こ、交際をすることになっているのか?」
「え!?そうなの!?」
「ちょっとちょっとちょっと珍太郎なーにを言ってるかな?ちなも間に受けないで」
「だが、お前、こく、こくはく、されていただろう・・・」
「緑間君どもりすぎだろ」
「んにゃ・・・うーん・・・告白なのかねあれは・・・だって彼こんなに普通だし逆にびっくりだよね・・・」


服を引っ張られる感触がしてその手の主を辿る。
まあ肌色的にこいつしかいないとは思ってたけど・・・振り返れば案の定青峰氏がつまらなそうな顔をして私達を見ていた。
なーにこそこそ話してんだよオレらもまぜろ、だなんて子テツと肩を組みながら小学生みたいに唇を尖らせる彼は本当に私の同い年なのか。

まあ男子の精神年齢は女子より三歳下って言うしね。
母性くすぐられるよねその表情。
両手で青峰氏の頬をつねってみれば、痛ェなんて言いながら歯を見せて笑うもんだから、私もおかしくなって笑ってしまう。


「君達は本当に仲が良いですね」


ふいに呟いた子テツの言葉に、二人して顔を見合わせる。
仲が良いか悪いかと聞かれたら良い方だとは思う。けど、そんな再確認するみたいに言われるほど仲良しに見えるのかな。

そういった意味で首を傾げれば、ほんのりと笑った子テツは小さく頷いた。


「少し、妬けますね」
「え、」
「焼ける?なに言ってんだテツ」
「黙っててください青峰くんイグナイトかましますよ」
「なんで!?」


"好きです"


はっきりと浮かんだあの時の情景。
顔が熱くなってるってことは、きっと赤くなってるってことだろう。
隠すように下を向けば、にいまりと笑ったちなが覗きこむようにして顔を近づけてきた。こういうときのちなは嫌いだ、くそう。

やっぱり、夢だったことにはできないんだ。

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