「おはようございます久遠さん」


数秒フリーズした。
待て心の準備できてない、校門入る前に深呼吸しようと思ってたのにそれすらできてない通学途中で出会っちゃってどうするのさああああ!
固まって動けずにいると、不思議そうに首をかしげた子テツ。いや私の方がこの状況を不思議に思ってるよ。なんでおま、おま、そんな普通なのおおおおお!!

キャラが不安定である。
かむばっく私のキャラ。

なんとかしぼり出した声は、言葉を紡ぐことなく、ただの音として地面に落ちた。
わぁいもう帰りたいや。


「どうしたんですか?僕の顔に何かついてますか?」


尋ねてくる彼に、意識するより早く頭の中のどこかが開き直った。
もうどうにでもなれってやつだ。


「むしろ子テツがどうしたの?あれ?私告白まがいなことされなかったっけ?夢?わっつ?いげむすんいりや?」
「質問が多いですね・・・とりあえず、いげ・・・むす?とかいうのは何語ですか」
「韓国語でこれはどういうことだって意味」
「グローバルですねあこがれます」
「棒読みェ」


安定すぎる子テツに開き直ったつもりの私もついていくのがやっとだ。
徹夜して考えた告白に対するセリフ全部とんだ。もう知らん子テツのせいだ。

成り行きで一緒に登校することになる。
いつもは朝練で私の登校時間にバスケ部を見たことはなかったから、なんだか子テツが横にいるっていうのも新鮮だ。
青空と同じ色の髪の毛が、歩くたびにぴょこぴょこ揺れている。
可愛いなあ、なんて微笑みながら見ていると、子テツの向こう側に見知った後ろ姿を見つけた。

あのスキーをした帰り道で、固まった空気の中ずっと寝ていた奴だ。


「あおみねしいいいいいいいいいいいね!!」
「・・・お前朝からなんなんだよ」


振り返った青峰氏はローテンションだった。眠そうな目で、それでも私たちが追いつくのを待っててくれる。乱暴だけど優しいやつだって私は知ってるよ。

青峰氏の登場に、少なからず安心している自分がいる。
ということは、やっぱり緊張してたわけで。だって告白されたよね私?あれ?

隣を見ても、いつもとなんら変わりない子テツの表情に私は顔が引き攣るのを止められない。なんで私だけ緊張しなきゃなんないの・・・?
心の底から意味わかんないんだけど。


「スキーぶりだね」
「昨日ですけどね」
「やっぱバスケしてても筋肉痛ってなるもんなんだな」
「え!?筋肉痛なってるの私だけじゃないんだ」
「使う筋肉が違いますから・・・たぶんみんななってると思います」
「だから今日は朝練抜きなんじゃねぇか」
「あ、そーゆーことね・・・」


よかったね、と笑ってみせる。
二人は顔を見合わせて、小さく頷いた。仲良しか。あ、仲良しか。


(・・・あっれー?私って告白されたよね・・・?)


もう誰か助けてくれください。

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