雪山の上からカラフルな頭を見下ろす。
楽しそうにはしゃぐ青と黄色と紫。そして、一人だけ地味な黒の頭を囲む緑と水色。
何か深いわけがあってスキーを提案したわけではない。本当に、ただの思いつきだが、それでもあいつらなりに楽しんでいるところを見ると、思いつきの行動も捨てたものではないと思えた。

そして。

止めていた足を動かして、滑る。
迫るオレに驚いた顔をした久遠は咄嗟に目を瞑ったが、激突してしまうほどオレは下手くそではない。
それをわかっているのか、緑間も黒子もなんら驚いた様子は見せず、座り込んで顔を庇うように腕を交差させる久遠を優しげな目で見ていた。

オレの洞察力は、黒子のそれに劣らない、と思う。
だからこいつらが彼女に対し他より違う反応を見せるのも、優しい目をするのも、その理由が何なのかも、わかっているつもりだ。

びっくりするからやめてよ征くん、と若干不機嫌そうな声音で頬を膨らませる久遠に、愛しい気持ちが沸き起こる。
だがこれは、緑間や黒子とはまた違う、想い。そう、きっと。


「すまない。ちょっとした悪戯心さ」
「まあ征くんのことだから青峰氏とかとは違って寸止めしてくれるだろうなとは思ったけど!」
「青峰君なら悪戯のつもりが本当に激突しそうですよね」
「それだよ、それ。あいつのフリはフリになんない」
「まあ・・・それは言えてるのだよ」


同じクラスで心当たりがあるのか、遠い目をする緑間にちょっとした笑いが込み上げる。
なんで座っているんだいと問えば、休憩してるのと笑う。そうか、と言いながら彼女の髪の毛についた雪を払ってやれば、久遠は寒さのせいかそれともそれ以外か、若干頬を赤く染めながら言った。


「バスケ部は天然タラシが多すぎる!」


半ば叫ぶように言った彼女はその視線を青峰に向けた。
それにつられるように、黒子も青峰を見る。

彼になにかされたんですか?と若干声のトーンを下げた黒子は、オレからしてみれば本当に分かりやすい。
そして、質問こそしないが黒子と同じような顔をして彼女の声に耳を傍立てる緑間も。


「や、青峰氏・・・んー・・・」
「された、もしくは言われたんですか」
「いや、こないだ家に来た時にさ・・・っこわ!子テツ顔怖い!」
「ああすみませんつい」
「棒読みだよ!?私なんかした!?」


笑いをこらえるのが、こんなに大変だとは思わなかった。

嫉妬の炎を瞳の奥に宿らせる黒子と、久遠は気づいていないが緑間も。

彼女は、ある意味でたくさんの"はじめて"をオレにくれる。
一緒に居ると、心地よい。楽しい。そして何より新鮮で、飽きない。

赤司という名に縛られただけの家族と呼ぶには程遠い関係。


「青峰氏だけじゃないよ、珍太郎だって無意識だとは思うけど女の子にとって胸キュンしちゃうような言葉言ってんだから」
「何を言ったんですか緑間君」
「知らん!」


家族愛というものはどういうものなのか、オレは知らない。
だけど、久遠に感じるのはきっとそれだろう。


「くだらない言い争いをするな。まだ少ししか滑ってないだろう。元をとらなくては滑り損だ」
「滑り損なんて言葉、初めて聞きました」
「オレもなのだよ」
「私もー。ま、ほどよく休憩したし、いっちょ滑ってやりますか!ということで起こして」


両手を伸ばしてくる久遠のそれを、微笑みながら掴む。
鍛えた筋肉を使って彼女を立たせ、支えるように腰に手を回す。


「征くん絶対モテるでしょう」


少し茶化すように腰に回した手を叩いてくる久遠に、どうだろうねと笑えば、彼女は探るような目でオレを見てからにやりと笑った。

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