「わ、わっほーい・・・!」


文字通り手取り足取り腰取り征くんに教えてもらった滑り方で、なんとかなめらかなところは滑れるようになった。
私と同じくへっぴり腰で滑っていた子テツも、さすが男の子と言うべきか、今じゃスイスイと滑っている。スタート地点が同じだっただけに、少し悔しい。

それにしても、


「スキーって、結構体力いるんね・・・はあ、」
「お前は普段から授業の時くらいしか体力を使うことをしないからそうなるのだよ」
「うるっ・・・さいなあ・・・!」


図星どころかその通りすぎて何も言い返す言葉がない。ていうか言い返せる気力すらない。
力なくストックを振り回せば、危ないだろうと難なく手首を掴まれた。くそ緑め。

ちょっと休憩、とその場に座り込む。
止まってしまった私と同じようにその場に留まる珍太郎に首をかしげ、好きに滑ってきなよと言えば渋い顔をした彼は、お前を一人にするのは危険だと思ってるのだが、と口ごもった。
なんだかんだ言って珍太郎は優しいよね。


「大丈夫だよそんな子どもじゃあるまいし」
「、だが」
「珍太郎今日一回も思うように滑ってないんじゃない?ていうかスキー初心者のクセに様になってるとこがムカつくわあ」
「知らん。できるのだから仕方ないだろう」
「どうせ私は運動音痴ですよーだ」
「そんなことは一言も言ってない」
「ま、いいから滑ってきなよ。ずっと私に付きっ切りじゃお金もったいないよ」
「・・・好きで一緒にいるんだ。オレの事は気にするな」


その言葉に、思わず珍太郎を凝視してしまった。
珍太郎は何食わぬ顔で、身軽に一回転してみせる青峰氏やりょた君を見ている。

"お前とは居るだけでなんつーか、楽しいし"

こないだの青峰氏といい、珍太郎といい・・・
天然たらしってこういうことなのか、言われるこっちの身にもなってみろって感じだ、ほんともう。

火照る頬を冷やすために雪を掴んで手当たりしだいに頬にあてる。
なにしてる、馬鹿めと呆れた風な彼の声。うるせぇお前のせいだろうがボケェと睨み上げれば、なんのことなのだよ!とキレられた。


「久遠さん、調子はどうですか?」
「あ、子テツ。くっそうなんで男の子って飲み込み早いの。悔しすぎるんだけどー!」
「・・・その様子だと、まだまだのようですね」
「うるっさい」
「すみません」


ふんわりと笑った子テツは、その場に膝をついて私の頬に解けた雪の雫を拭ってくれた。
子テツは天使である、まる。あれ、デジャヴ。

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