「ちょっと!」


途中でトイレやちょっとした買い物をするためにコンビニに寄った。
無言でポテチの袋を久遠ちんのかごの中に入れようとしたら、目ざとい久遠ちんがそんなオレの行動に気づいて手をはたく。地味にいてーし。

けちー、と呟いてみる。返ってきたのは無言だった。
久遠ちんは最近、スルースキルを身につけたみたいだ。ちょっとおもしろくない。
自分でも自覚してるほどに大きな体で久遠ちんの背後から半ば抱きつくように覆いかぶさる。
重いよと呻きながらも抵抗しない彼女。慣れってホント怖いね。


「何買ったんスか?」


かごの中を覗き込んだ黄瀬ちんは、サロン○ス・・・と渋い顔をした。
かごを持ってるだけでそんなに買い込んでない久遠ちんである。一応サロン○スを購入しようとしている理由を聞いたら、察してよと眉を寄せられた。

明日は筋肉痛だって、その予想が現実にならないといいね。


「ほんとね」
「久遠ちゃん、バスケ部のマネになればいーのに」
「そうだよ。なんで入んないわけー?久遠ちん居たら絶対楽しいのに」
「だって疲れるもん」
「そんなだからババアみたいにそれ買わなくちゃいけなくなるんだよ。入れし」
「そっスよ!桃っちも喜ぶっスよ?」
「だって疲れるもん」


二度とも全く同じトーンで返してきた久遠ちんに、部活に入るという選択肢はないらしい。
征くんも誘ってきたけど、なんでみんなそんなに私大好きなのー?なんて冗談のように言う彼女に当たり前じゃんと真顔で返せば、少し頬を染めた。なんかかわいー。


「ってか今の!聞き逃すとこだったけど、久遠ちゃん赤司っちの誘い断ったんスか!?」
「オレがなんだい?」
「うっわビビった。赤ちん今、黒ちんなみに影うすかっ・・・なんでもない」


すっと細められた瞳に口を紡ぐ。
買い物はまだなのか、と久遠ちんのかごを覗いた赤ちんは、サロン○スを目に留めて少し笑った。いい判断だね、と言う赤ちんに久遠ちんは若干引き攣った笑みでうるさいなあ、と返す。

赤ちんにそんなこと言えるの、久遠ちんくらいだと思うよ。

そっとポテチに手を伸ばしてすばやく久遠ちんのかごに入れる。
しょうがないなーあっちんは、と笑う彼女は、けっこうオレを甘やかしてることに気づいてるのかな。

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