じりじりじり、と耳元で大きな音がする。
目をこすって、私は半身を起こした。んん、眠い。
ちかちかと光っているスマホを手に、もう一度目をこする。刹那、持っていたスマホが振動して危うく投げ飛ばしそうになった。ビビるわ!


「あいもひもし」
《・・・寝起きかい?》
「せーくん・・・はやおきね」


電話口の向こうで微笑む気配がする。その征くんの後ろからたくさんの聞きなれた声が聞こえて、眉を寄せた。
テンションの高い、その声は、りょた君と青峰氏のもの。


「・・・もしかして、わたし、」
《予想通りだ。ちゃんと目覚ましセットしてたのか?久遠》


背筋が凍った。
時計を見ると、七時半を指している。うそん。設定間違えてる。ちなみに集合時間は七時である。うそん。

ご、ごめん・・・と、声を絞り出す。
電話の向こうで、青峰氏のばーかという声が聞こえた。今回だけは反論できる立場にいないけど、むかついたからであったその時に殴ってやろう。


《十五分だ。迎えに行くからそれまでに支度しておけ。いいな?》
「じゅっ・・・!が、がんばりますっ!あ、でもちょっと遅れてきてくれても」
《久遠?》
「すみません!じゃあ支度してきます!」


がんばれ、と投げやりの応援をいただき、ベッドから飛び降りる。
急いでジャージに着替えて髪の毛も適当に結んで、下におりた。おにぎりを作ってくれてるお母さんにお礼を言って、洗面所に飛び込む。鏡に映った自分の残念な身なりに、ふとこみ上げるものがあったけど、ここは我慢だ。遅れたらって考えることのほうが怖い。
事前に準備しておいてよかった・・・昨日の私よくやったよ本当。

インターホンが鳴る。
きっかり十五分。正確さに舌を巻く勢いで荷物を手にとって玄関に向かった。


「いってらっしゃい久遠ちゃん。赤司君?によろしく言っておいてね」
「うん。いってきまーす」


玄関を開けると、そこには赤い彼。
差し伸べられた手に逆らわず、恐る恐る手を伸ばす。優雅に微笑んだ征くんは、大きな車を指差した。
なんとなく、予想はしてたけど・・・やっぱりお金持ちなんだね征くん。

若干呆気にとられている私の手を引いて荷物をトランクに積める。
後頭部座席で後ろを振り返って意味深な笑みを浮かべる青峰氏の頭に手を伸ばして叩いて、これまた征くんに手を引かれて車に乗り込んだ。


「久遠さん、ここどうぞ」
「あ、子テツおはよう!ごめんね寝坊しちゃって」
「おはようございます。大丈夫ですよ、僕は」
「はっやっく!久遠ちゃん乗って!早く行きたいっスー!」
「時間ロスしたせいでお菓子なくなるし。久遠ちん弁償ね」
「てめー頭叩くなよ久遠!脳細胞減るだろうが」
「昨日あれほど目覚ましをかけろと言ったのに、お前はなにをしているのだよ久遠」
「うん、子テツが言葉の最後に僕は、ってつけた意味が分かった」


みんな子テツくらい寛大な心を持ってほしいものだ。
でも悪いのは私なのでとりあえず謝っておく。

助手席に征くん。
真ん中の列に右から子テツ、私、あっちん。
後ろの列に右から青峰氏、りょた君、珍太郎。

でかぶつ三人が横並び・・・狭そう。そして予想したとおり、狭いだらなんだら喧嘩している。低レベルな争いに、私はため息をつきながらあっちんのポテチを一枚もらって食べた。「許可出してねーのにー」いいじゃん一枚くらい!


「そういや、桃井さんは?」
「さつきは用事あるとか言ってたぜ」
「めちゃくちゃ悔しそうにしてたっスよね!行きたかったって!」
「・・・あら」


大丈夫だ桃井さん。
たくさんのお土産話を持って帰るよ。


「久遠さん」
「うん?」
「楽しみましょうね」


とりあえず子テツは天使である、まる。

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