温かそうなおしるこを手渡された。何故。
付き合ってくれた礼だ、とそっぽを向く珍太郎。おしるこなんて飲んだことないんだけどなあ、と思いながらもありがたく受け取っておく。
冷えた両手に心地よい温度だ。それをそのまま頬にあてがって、私は小さくため息をついた。吐いたそれは白い。


「冬だね」
「? そうだな」


脈絡もない言葉に、だけど珍太郎は生真面目に返答する。
なんだか面白くて笑みを浮かべれば、何を笑っているのだよ、と若干不機嫌そうな視線をいただいた。怖い怖い。

プルタブをきって一口飲んでみると、案外イケた。
普段から珍太郎とは食べ物の好みだけは合うのだ。まさかここまで味覚が同じだとは思わなかったなあと、私はまた笑う。
一人で笑う私を珍太郎はそれ以上なにも突っ込むことなく、はあと白い息を吐き出した。

何度も思ってきたことだけど、珍太郎は綺麗な顔をしている。
こんな美形さんと一緒にお買い物なんて、お母さんが知ったら泣いて喜ぶだろうな。へっへっへ、私にもこんな美形のお友達がいるんだよ。誇らしい。


「・・・ジロジロ見るな。何かついているのか?」
「んーん、珍太郎、綺麗な顔してるなーって思ってただけ」


あれ?このセリフなんだか前にも言った気がするぞ?とデジャヴ。
前にも見たような珍太郎の慌て具合に、私は青峰氏の退部事件の事を思い出した。そうだ、あの時だ。

慌てた珍太郎は、口を引き結んで、そして私に言ったのだ。

"愛らしい"、と。

思い出して、少し恥ずかしくなってしまった。
褒められるのにはあまり慣れていないのだ。今後からむやみやたらに褒めるのはやめておこ「かんちがい、してしまうぞ」へ?

頬を赤く染めた珍太郎がまっすぐに私を見つめている。
ゆっくりと近づいてきた綺麗な顔に、私は動けずに固まった。


「馬鹿」


小さな声で呟いた後、珍太郎は手に持っていたおしるこを私の頬に押し付けた。


「やる」
「え、え?え、これ珍太郎のじゃ、」
「いいからやる。帰るぞ、送るのだよ」
「へ、あ、うん」


おしるこでふさがった両手。
私のぶんの荷物を持って、私の歩調に合わせて斜め前を歩く珍太郎は、ぶっきらぼうだけど、優しいのだ。

近かった彼との距離に、今さらだけど心臓が暴れだした。

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