「は?スキー?」
《そう》
「急にどうしたのだよ赤司。なにかあったのか?」
《別にどうもしないよ、ただの息抜きにどうかと思ってね。日程は今週の日曜日、朝の七時に帝光に集合だ》


という電話が来たのは昨日の夜のことだ。
どうせオレに、いやオレ達に拒否権などないのだろうが、苦々しい思いで携帯の画面を数秒見つめていた。
スキーだと?オレはスキーウェアなど持っていない。どうせ買えとか言われるのだろうから、無駄な抵抗はしないでおくが。


「なに仏頂面してんの珍太郎」


慣れたくはないが特殊なあだ名で呼ばれるのも慣れてしまった今日この頃。
不思議そうな顔で覗き込んでくる楸の距離の近さに一瞬息をとめた。こいつはいつもオレの気など知らずに・・・、心臓が止まりそうになるのだよ。

最近席替えをした。
別にどこの席でもなんとも思わないオレだが、おは朝でも一位だったせいか今回の席替えで手に入れた楸の隣のポジション。
隣だと分かった瞬間に見せたこいつの笑みに不覚にも胸が高鳴ったのは記憶に新しい。
ちなみに青峰は少し遠ざかった。

授業中だというのに気にした風もなくねえねえと煩い楸。
オレは仕方なくとでもいうような雰囲気をかまして、なるべく小さな声で喋った。


「赤司からスキーの誘いがあったのだよ」
「え・・・?バスケ部で行くことは決まってたんじゃないの?」
「は?」
「へ?」


楸曰く。
バスケ部でスキーに行くことになったから君もどうだい、と赤司に誘われたらしい。
・・・さすが赤司というべきか、まあ逆らえないから決定事項になるわけだが・・・

唖然とするオレに楸は小さく征くん・・・と若干トーンを下げて呟いた。


「珍太郎スキーできるの?」
「やったことはない」
「え、スキーウェアとか持ってんの?」
「それを今考えてたところなのだよ。・・・買いに行くしかないな」
「じゃあ一緒に行こうよ」


お誘い受けたからには行きたいし、でも私もスキーウェアとか持ってなかったんだよねー、と笑う彼女。
細い指先で回したペンは、机の上に転がった。下手くそなペン回しなのだよ。

オレは眼鏡のブリッジを押し上げて、一言。


「・・・仕方ないから一緒に行ってやる」


ああ、もっと素直になれないものか。

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