初めて来た久遠の家だが、まあなんつーか想像通りだった。
なんの飾り気もない部屋の中。そしてジャージ上下着用(髪の毛は一応整えたらしい)のこいつ。
素直な感想を述べれば、どうせ私には女子力なんてものないですよと不貞腐れてしまった。今に感じたことじゃねぇが、こいつは時々面倒くさい。

それから何をしたかって、別になにをするでもなく時は過ぎていった。
机の中を物色してみれば、何造ちゃんと同じことしてんのと呆れられた。久遠にとって一番近い位置にいる虹村さんが少しだけ羨ましくなった。
机の中にはいつかの昼休憩にオレと緑間と佐藤と久遠で撮った一枚の写真が現像してナイロンの紙に入れて保管してあった。
最近の学生はなんでもすぐにカメラに残したがる。それはこいつも例外ではなく、なんとなしに集まったこいつの席で、急にスマホを取り出したのだ。

ピースだけじゃ面白味がないから、いろんなポーズしよう。

そう言っていた久遠を思い出した。
ぱしゃぱしゃ何枚も撮りまくるこいつに、緑間は嫌そうな顔をしていたっけか。
そしてオレはふいの顔を撮られ、ブサイクだなんだと馬鹿にされた。今思い出してもムカツクぜ。
でも結局、こいつの机に保管してあったのは面白味もなんもねぇピースした写真。
ただ、普段からあまり笑みを見せない緑間が少しだけ口角を上げてる。


「お前と虹村さんってどうなの」


気づけば意味のない質問をしていた。幼馴染み以上の答えが返ってくるわけでも、求めてるわけでもねえけど、そう、本当に意味のない質問だ。
ここで久遠から虹村さんに少しでも気のあるような言葉が出たら、オレはどうするのだろう。

ベッドに腰掛けてスマホをいじっていた久遠は、その画面から目を離さずに幼馴染みと言った。少し懐かしさがこもってるような、そんな声。


「造ちゃん、もう卒業しちゃうんだよねー。最近はときが過ぎるのが早くって」
「ババアかよお前」
「うるっさいな」
「・・・虹村さん、どこ行くんだ?」
「んー・・・、あんまり他言しないほうがいいんだけどね。まあ青峰氏だしいっかなあ」


それはどういう意味だ、と問おうにも、先に口を開いたのは久遠だった。


「造ちゃんのお父さん、入院してるの。だから造ちゃんは家を出るかどうか戸惑ってるみたいだけど、おばちゃ・・・造ちゃんのお母さんは自分の道を進みなさいって、そうやって言われてるって造ちゃんは言ってた」
「・・・ふーん、」


なんだかしんみりしたわ、ごめんと笑う。
そんなことよりなにより、オレには久遠が、まるで虹村さんが居なくなることに寂しさを感じてるような表情をしたことが気がかりだった。

あー、やっぱ、虹村さんとこいつの間には言葉には言い表せねぇくらいの絆があって、まずそれを壊すことも、超えることすら、できねぇ。

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