復活を遂げたのは、倒れた日から三日後だった。
休んでる間、珍太郎がずっと授業中に取ったノートの写真を送ってくれていたけど、残念ながら私はそれを保存しただけで勉強なんてものはしていなかった。頭が痛かったり熱が下がらなかったりで、あまり勉強する気になれなかったのだ。勉強したら今度は知恵熱でダウンするという私の読みは正しかったと思いたい。
とどのつまり、久々に登校した私に、進んでしまっている授業内容はチンプンカンプンなのだ。
先生、それ、地球語ですか。


「せっかく写真を撮ってやってたというのに、お前は何をやっていたのだよ」
「暇してました」
「殴っていいか」
「アイムソーリーヒゲソーリー」


無言で拳を振りかぶる珍太郎に、私はそそくさと青峰氏の背中に隠れる。
まったく、病み上がりのこの体になんて仕打ちをしようというのだ珍太郎!暴力反対!

だるそうに首を鳴らした青峰氏は、邪魔だひっつくなと言いながらも引き剥がそうとしない。
なんとなく脇をくすぐってみれば、効かねぇよとなんとも面白くない返答が返ってきた。この筋肉ゴリラめ。


「・・・いつまでくっついているのだよ」


不機嫌な珍太郎の声。
眼鏡のブリッジを押し上げながら不満げな彼を不思議に思いながら顔を覗きこむと、一気に見開かれた綺麗な瞳とすべすべの肌に灯る赤。
初々しい反応に、ウブだなあとほくそ笑む。笑うなと言う鋭い言葉にさえ私は笑ってしまい、今度こそ振りきられた手が軽く頭にあたった。
痛いなあ、もう。


「今日の久遠はどこか・・・なんていうか、おこちゃまなんだけど」
「失礼だなあ、ちな。三日間同じ部屋で過ごしてた私の心境分かる?」
「暇をもてあました」
「神々の」
「あそ「なんかウゼェ」


いつの間にかコントになっていたちなとの会話を強制的に終了させた青峰氏は、どかりと私の椅子に腰掛けた。
ちっせぇな、と長い足を組む。なんかちょっとムカついたから軽く蹴っておいた。


「次の授業なんだっけ」
「世界史なのだよ」
「あーもうほんと私が休んでる間にめっちゃ進んでるから何話してんのかさっぱりだよ」
「それは倒れたあんたが悪い」
「佐藤お前血も涙もねぇな。そーゆー冷酷さ嫌いじゃねぇぜ」
「ありがとう青峰君うれしくないけど」
「ふふ」
「ふん」


穏やかなときが流れる。
やっぱり私は、みんなとこうしてるほうが性に合うらしい。

なんとなく見た窓の外は、ちらほらと雪が待っていた。
季節はもう、すっかり冬。


「なんか、やっぱお前居たほうが面白れぇわ」


言いながら小さく笑う青峰氏に、少しの嬉しさを噛み締めておどけたように笑って見せた。

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