なんとなしに足が久遠ちゃんのいるクラスに向かってしまうのは、最近日常化してきた。
千夏ちゃんとも仲良くなれたし、バスケ部のことで嫉妬の対象だった私にとって、彼女達がいるクラスはとても心地よい。
自然と早くなって行く足。嬉々として教室を覗けば、そこには一人でケータイをつつく千夏ちゃんがいた。
ちなという独特な呼び名で彼女の名前を呼ぶ久遠ちゃんが見当たらない。
持ってきた飴を千夏ちゃんに渡しながら彼女の所在を聞くと、ああそうだった、と思い出したかのように手を打った。


「青峰君、緑間君、君らもあいつの仲良しだから言っとくけど」


妙な前置きに三人して顔を見合わせ、首をかしげる。
そして次に発せられた言葉は私達の動揺を誘うには十分だった。


「久遠、体育の時間に倒れちゃってさー、」
「「「は!!?」」」


***


「って・・・」
「そう、ですか・・・」


オロオロする私と同じかそれ以上にオロオロしているテツ君。
見つけるのに大分苦労した。相変わらずテツ君は影が薄い、けどかっこいい!!って、そんな場合じゃなくて。
いつもは冷静沈着であまり表情を崩さない彼がこうもオロオロしていると、私まで余計に心配になってくる。
でも、そろそろ休憩時間も終わってしまう。
久遠ちゃんはきっと自分のために授業をサボるなんてこと許さないだろうし、それはテツ君もわかってるのか「次の十分休憩に顔を覗かせてみましょう」と不安げな声で言った。


「うん、じゃあ保健室に近い私の教室に来て声かけてくれる?」
「はい。では」


不安げな顔のまま背を向けるテツ君。

私はテツ君が好きだ。
でもきっとテツ君は・・・

私が倒れても同じように心配してくれるのかな、と馬鹿らしいことを考えた。
少しだけ、久遠ちゃんが羨ましい。

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