今日は朝起きたときから少し頭が痛かった。
熱を測ろうにも体温計が見つからず、まあ大丈夫だろうと思って登校。
そして授業を受けていたんだけれど・・・


「・・・、う」


冷たい風がふく中、今日の体育の授業は校庭でソフトボール。
アップとして校庭を三周したところで私の体力は気力と共に底をつき、気づけば目の前が真っ暗になっていたのだ。

次に視界に映ったのは、真っ白な天井。
人生であまり体験したことのない、いわゆる気絶というものをしてしまったらしい。
唸りながら上体を起こすと、座っているだけなのに眩暈がした。倒れるまで自分の体調に気づけないとかどんだけ・・・
額に手を当てる。当てた手も額も熱くて、ちょ、これ私大丈夫なの?


「あー・・・つら」
「大丈夫かい?」
「おぅわっ」


突如視界に入って来た赤い髪の彼に、ぼーっとしていた私は勢い余って後ろに倒れそうになる。
それをやんわりと支えてくれた征くんまじイケメン。
ていうかどこから現れたし。
・・・駄目だ、頭が働かない。
どうやら、私の体は相当まいっているらしい。

口を利くのもなんだか憂鬱で、征くんが来てくれてるっていうのにぼーっとその整った顔を見ることしかできない。
すると、彼の綺麗な手が私の方に伸びてきて、温かくも冷たくもない、ぬるいそれが頬にあてがわれた。

っくん、

イケメンを前にそんなことされてときめかないほど、私は女子を捨ててはいない。
それでも今は体のだるさの方が勝っていて、されるがままに私は征くんの動向を見守った。


「熱いな」
「・・・ん、どうやら、やられてしまったぽい、です」
「まったく・・・なんとなく校庭を見た時に君が倒れたのには驚いたよ」


ああ、だからここにいてくれてるんだ。
ていうかそんな遠くから、私だってわかったの・・・

そんな疑問を含めた視線を読み取ったのか、征くんはオレを誰だと思ってる?ともっともな言葉。
そうだね、と笑って見せれば、すっと目を細めた彼はやんわりと私の体をベッドに押し倒した。
そして暗くなる視界。その黒い影の招待が、征くんの手だと理解するのにいつもより時間がかかった。


「とりあえず、たくさん寝て体を休めるに限るよ」
「うん、ありがとう」
「君の両親は夕方まで迎えに来ることができないそうだから当分ここにいることになる、と保健の先生がおっしゃっていた」
「了解です」
「・・・久遠、」
「?・・・」


征くんの手は私の瞼の上に乗っているままだ。
名前を呼んだきり何も言わない彼に、私は夢の中に飛んでいきそうな意識をなんとか保ちながら彼の言葉を待った。

ふわ、と瞼の上に乗っていた手が遠のくのが分かる。
薄く目を開いたとき、赤い頭は視界の真横にちらついた。
手は肩に回っていて、彼の吐息が頬にかかる。

耳に触れた暖かい感触が、一瞬で離れて、私の意識はシャットアウトした。

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