「は?」


自分の声がいつもより何倍も低くなるのが分かった。
バッチリフルメイクの偽造した瞳で女々しくオレを見上げてくるそいつの顔が、しまったとでもいうように微かに歪められる。
ここでオレが完璧にキレたら、聞きだせるものも聞き出せなくなるかもしれない。
掴みかかりたくなる衝動をぐっとこらえ、できるだけ優しく問いかけた。


「んー、それ詳しく教えてくんないっスか?」


オレの声音が優しくなったことに気をよくしたそいつは、嬉しそうに笑って口を開いた。
オレに群がってくる女子っていうのは、大抵軽いクズ女だ。ちょろい。
オレ、こんな子ばっかに囲まれてるのか、それもそれで嫌だな。


「楸久遠って子いるでしょ?最近バスケ部に超媚売ってるってうちらの中で評判悪いんだ〜。特別可愛くもないのに、黄瀬君と絡んでるのもよく見るし。紫原君と一緒に帰ってたっていうのも聞いたし、マジ調子乗ってるよね!」


黄瀬君、あんな子に騙されたら駄目だよー?ほんとミーハーなんだからさ。

いやいやいや、どっちがだよ。
久遠ちゃんとは緑間っち関連で仲良くなった。確かにそこから根を張るようにバスケ部と仲良くなっていったのは知ってる。
オレも最初はくだらない嫉妬心でミーハー女だって決め付けてたこともあるけど、彼女はそんな子じゃない。

あの赤司っちとも普通に話せて、
青峰っちに臆することなく喧嘩を売って、
紫っちに懐かれて、
緑間っちにも気にかけてもらってて、
黒子っちからも信頼を寄せられてる。
かくゆうオレだって、久遠ちゃんのことが素直に好きだ。彼女と居るのは、心地良いというか、素の自分を出せる数少ないオレの"居場所"。

話していた女子生徒の肩に手を置けば、途端に目を輝かせながら顔を赤らめてオレを見る。
さっきまで悪口吐いていたそいつの表情の変わりっぷりに、オレは寒気を感じた。


「まぁ確かにバスケ部と仲はいいっスわ。オレだって久遠ちゃん好きだし」
「え、いたっ・・・!黄瀬君、ちょっと肩痛い〜」
「その無駄に間延びした喋り方やめてくんね?うざい」


冷えた目で目の前のそいつを睨む。
うろたえた様子でどうしたの黄瀬君、と作った笑顔でオレを見る。

どうしたもこうしたもねーよ、お前はオレらが大切にしてる子の悪口を、よりにもよってこのオレに愚痴ったんだ。
許すわけがない。


「久遠ちゃんに何かしたら、オレはもちろん、バスケ部が黙ってないっスから」


そいつから笑顔が消えた。

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