見慣れた水色の頭を見つけ、私は駆け寄って肩を叩いた。
振り向いた子テツはこんにちは、と無表情に挨拶をくれたあと、少しいいですか?といつもより若干低い声で言った。
「うん、なに?」
「・・・あの、昨日」
「?」
紫原君と一緒に帰ってたって聞いたんですが本当ですか?と問いかけてくる子テツの瞳は、何故か不安げに揺れていて。
どうしたんだろうと思いながら頷けば、うつむいてしまった。
え、どうしたの子テツ。
「二人は、その・・・」
お付き合いしてるんですか?と続いた言葉に、私は反射的に彼の肩を叩いてしまった。
いたっ・・・と小さな悲鳴をあげる子テツに慌てて謝りながら、誤解だと告げる。
見開かれた大きな目に、つられて私も目を見開けば、しだいに和らいでいった表情に安心した。
私とあっちんが?ないない有り得ない。
まったくもう最近の子たちは、仲良しの人と帰ってるってだけですぐそういうことにしようとするんだから。
「でも、紫原君が特定の女の子と一緒に帰るのは珍しいですから。・・・部活を、休んでまで」
「あっちんも疲れてたんじゃない?やっぱり部活厳しい?」
「まあ・・・強豪校ですから仕方ないです」
「宿命ってやつだねー。それでも限界はくるさ誰にでも」
子テツも疲れたらいつでも誘ってね、一緒に帰ろう。
と言ってから、はたと自分の言葉を思い返す。
いや待て待て、疲れたからっていって私と一緒に帰ることが癒しになるとは思えない。ていうか癒しになるわけがない!
「ごめん今のなし!めっちゃでしゃばった!」
「いえ。そんな時はご一緒してくれたら嬉しいです」
「へ・・・そ、そう?」
「はい」
本当に嬉しそうな顔をするものだから、私も思わず笑ってしまう。
最近、子テツの表情が豊かだなあ。
「紫原君とはなんでもないって聞いて安心しました」
「うん。・・・うん?」
「やっぱり僕はあなたが、・・・」
私が?、聞き返そうとして、子テツの頬が若干桃色なことに気づく。
どうしたのと問えば、なんでもないですと言われ、追求するのもアレだし何も聞かないでおくことにした。
あ、昼休憩が終わる。